MacPodへの布石

今年の10月だか11月だかに発売されると噂が流れている、Apple製タブレット。MacとiPodの製品ラインナップのすき間をブリッジする、ここ数年で最も戦略上重要な製品だ。 

このタブレットの物理的な形状がどうなっているのか、とくにリーク情報があるわけではないが、とにかく薄く作りたいんだろうとは思っている。薄さを実現するためにプロセッサが決定され、薄さを実現するためにバッテリーの容量が決められている。 

おそらく、低消費電力のプロセッサ(ARM)を使って、バッテリーも……ノート並みに搭載すれば20時間とかそういう時間稼働できるにもかかわらず、薄さを実現するために、いいとこ8時間ぐらい稼働すればいいという味付けになるだろう。もちろん、
電池交換はできない(最近のお約束)。 

搭載されるインタフェースについて、最近1つのヒントが出てきた。
MacBook Pro搭載のSDカードスロットだ。おそらく、このMacPodだかなんだかいうタブレットはSDカードスロットを搭載する。 

OSごとSDカードに入れてSDカードからブートして、アプリケーションもSDカードに入れるので本体にはまったくストレージが存在しない……というパターンもあるかもしれない。利用上、やたらとリブートする場面があるので、たしかに起動時間が短いSnow Leopardでないとイライラしそうだ。 

USBは……分らないけれど、多分ある。だから、このマシンは
最低でもUSB端子ぐらいの厚さはあるはずだ。有線LANなし、無線LAN/Bluetoothあり。音声出力あり、SDカードスロットあり。それだけだ。 

光学ドライブはおそらく採用しない。独立したコンピュータとしてのアイデンティティに光学ドライブは不要になってきたと考えているのだろう、Appleの連中は。これによって大幅な薄型化が可能になる。 

ものすごく薄いんだけれど、その薄型筐体や画面を保護するためにカバーが必要になる可能性が高い。すぐに割ったり落として壊したり……しないように、何か手を打っておく必要がある。あと、誤操作防止用にホールドスイッチが付くかもしれない。 

搭載ドライブはHDDではなくSSD。800ドルといった(噂ベースの予想)価格を考えると、それほど大きな容量のものは積めない。64GBとか128GB。下手をすれば32GBという可能性も否定できない。SDカードにデータやアプリを入れることを許容すれば、それほど不自由な容量ではないだろう。

タッチパネルのディスプレイが搭載されるが、それが液晶なのか有機ELなのか、はたまた電子ペーパー的なものになるのかは不明。このマシンが電子ブックリーダー的な意味合いが大きければ電子ペーパーを(AmazonのKindleみたいに)採用するのだろう。これを否定できるような材料はないし、積極的に支持できるほどの材料もない。 

OSとしてパソコン系のMac OS Xが搭載されるのか、モバイル系のiPhone/iPod touch OSが搭載されるのかも不明。ただ、ARM系のMac OS X搭載機はいまのところ存在していない。個人的にはARM系Mac OS Xという路線を希望したいが、判断材料がまったくない。 

ただいえるのは、タッチ操作でMac OS XのGUI部品を……とくにメニュー関連を操作するのは現実的ではないということだ。それほどディスプレイの画素数も高くなさそうだし、物理的制約からいえばiPhone系のOSが採用されそうだ。 

何回も繰り返しているのだが……このマシンは
Mac OS X 10.6, Snow Leopardの発売よりも前には登場できない。10.6に搭載される何らかの機能ないしは新たにサポートするチップを前提としている。このへんに最大のヒントがありそうだ。前回、Leopardの登場時にUSB接続のEthernetアダプタがサポートされて、その後にEthernet端子を持たないMacBook Airが登場したという実例がある。 

このマシンが、何を売るためのプラットフォームになるのか……というのも考えておかなくてはならない。 

マシンの売り上げだけで成り立つ商売というのも考えにくい。iPhoneやiPodは音楽ソフト/ムービーソフト/アプリを売ってナンボなデバイスだ。だが、このMacPadは何を売るためのものなのか? 

やっぱり、物理的な形状からいえば電子ブックなのだろうか。PDFビューワーというあたりが「ありえそうな」感じではある。雑誌やマンガを読むためのデバイス。音楽も聞ける。 

iPhoneが、インターネットをどこにでも持ち歩けるデバイスだと考えるなら、このMacPodは……Mac用のアプリケーションをどこにでも持ち歩けるデバイス、と考えると楽しそうだ。ただし、ARMバイナリにコンパイルし直す必要があるので、それをSDカード経由でMacから転送するなり、ダウンロードするなりする。 

このマシンがプレイヤーなのか、コンピュータ的な扱いができるのかも分らない。閉じた環境を作って、そこに魅力的なソフトウェアをどんどん供給する、プレイヤー型のビジネスというのは準備が大変なので、既存のソフトウェアが使えたほうがいいだろう。 

Apple1社でソフトウェアの供給体制を作れるわけでもないので、案外……このマシンは汎用的なOS(つまり、Mac OS X)が載るのかもしれない。だとすると、タッチ操作のほか音声認識などのテクノロジーも併用しないと使いにくそうだ。Finder上でファイル操作を行うとかいうのは非現実的だろう。 

カメラが付く可能性は……たしかにありそうではあるのだが、どちら向きに付くのかが不明だ。画面側に付けるなら、ビデオチャットを考慮しているのだろうし、画面の反対側に付けるなら、カメラ的な役割を考慮しているのだろう。……画面が白黒でなければ、カメラ的な使い方も悪くはないが……屋外では画面の視認性が著しく落ちそうだ。 

子供が学校で使うマシン、という「教科書やノート」のような役割をこのMacPadに期待するのであれば、画面はカラーであるべきで、既存のソフトウェアが使えたほうがいい。 

3Gのインターネット接続機能については、なんともいえない。搭載するのかしないのか……しない方に賭けてみたい気がする。ユーザーがiPhoneも持っているのにこのMacPadでふたたび電話会社に契約する……とかいうのは、ちょっと納得できないだろう。教育分野で使うにしても、子供がインターネットに接続しまくって親に法外な電話料金の請求が届く(導入するなら定額制だろうけれど)とかいう利用シーンは考えたくない。穏便なところで、「オプションで可能」といったところか。

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