Local AR

Argumented Reality(拡張現実)という言葉がある。カメラから入力した映像に対して、コンピュータで付加情報を重ねて表示する技術……などといわれているが、別に難しい話ではない。 


具体的にイメージするものは、ガンダムのコクピットのインタフェースだ。映像の上にコンピュータの情報を付加することで、利用者を補助する……というような、昔から割とよくある話。あるいは、「ドラゴンボール」に出てくる「スカウター」でもいい。(多分内蔵の)カメラで映すだけで強さが分るという便利な道具(ヘッドマウント・ディスプレイ)だ。 


そうした普遍的にみんな同じように考えていることに対して、呼び名を与えて新しい概念っぽい味付けにしているというのが現状だろう。iPhoneとかAndoroid携帯電話などの携帯情報機器に実装されていくのかな、といった昨今である。 


自分としては、携帯情報機器でそれを行うという方向性ではなく、デスクトップやノートブックのコンピュータで行うという方向性を支持したい。そちらの方が生産性の向上度合いが高いと考えるからだ。 


昔から考えていたのはそのスタイルなので、これを世間一般で言われているARと区別する意味で、「Local AR」と呼ぶこととする。世間一般で言うARは、あえて「Mobile AR」とでも呼んでおくとしよう。 



現在のコンピュータのGUIは利用者への補助が十分ではない。個別のアプリケーションの情報については、個別に表示したり整理したりはしているのだけれど、全体としてどーーなのよとか、いま何をやっているよとか、次はこれをやりたいんじゃないのとか、どういう作業のために何をすべきだとか、そういう「全体的な状況」というものを補助表示したりはしない。 


たとえば、メールを書いていて、それに先立ってファイルをアーカイブしたとする。当然それは、メールに添付するための行為だが、現在のコンピュータはそうしたアクションを補助してくれたりはしない。 


もちろん、ここでファイルをメールに添付したときに自動でアーカイブするというアプローチもあるわけだが、それはそれ。 


メールの文面、送信先、ファイル作成先のフォルダ、過去のアクションから推測して、メールにどういうファイルを添付したがっているのかをサジェストするとかいった機能は期待したいところだ。 


そうしたサジェストが本当に役立つものなのか、という議論はある。サジェスト内容をユーザーが理解できなかった場合には役立たない。うっとおしいと言われることだってあるだろう。 


だいたい、上級者には迷いのない操作を行うということを期待できるが、ビギナーに補助をしたところで、それが受け入れられるかという問題がある。上級者は「そんなもん必要ない」とうっとおしがるかもしれないし、ビギナーはその内容を理解できないかもしれない。 


割とWindowsではこのあたりの補助を試しているように見えるが、あまり有効に機能しているとはいえないようだ。役立つほどでなく、ギリギリうっとおしいかどうかというレベル。Windows風(Microsoft風)にそのアプローチを推進していくと、「○○でも使えるウィザード系アプリケーション」というのが、その行き着いた先なのかもしれない。途中経過はどうでもいいから、結果だけを与えようと考えるならそうなるだろう。 


コンピュータに対する理解が少ないユーザーにはWindows風アプローチが喜ばれるだろう。だが、Mac OS X風のアプローチは、コンピュータを理解しているユーザーを「考慮している」味付けだ。ビギナーにアプローチしつつも、ハイエンドユーザーを無視しないのがMac OS X風。そのぶん、Windowsユーザーには「Macは使いづらい」とか言われてしまう原因になるのかもしれないが、まあそのあたりはAppleとしても納得づくなのだろう。 


だいたい、完全にWindowsユーザーに「媚びる」なら、Windowsと操作方法に互換性を持たせるところまでやればいい。そのあたり、ギリギリまで操作方法をチューニングしているのが今のMac OS Xの方向性だと理解している(その反面、UNIX系のユーザーには全力で媚びているかもしれない)。 


Mac OS X登場直後から、実際のウィンドウ・システムの上に情報をオーバーレイして操作の補助を行うということを考えていた。それに近い実装がMac OS X 10.3でDashboardとして追加された。ウィンドウ・システムの上に別の世界観を持つアプリケーション群をオーバーレイ表示するというところまでは、ガンダム・インタフェースと同じだ。 


だが、Dashboardは昔のClassic Mac OSにあったDA(Desktop Accesory)のように小型のユーティリティを呼び出すだけのインタフェースでしかない。 


それでも、何もないよりはマシだ。これを乗っ取って自分の考えているようなインタフェースを実装するということも、今後十分に考えられるだろう。

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