iWork 11はどうなる?

iLifeとともに、仕事でMacを使うのが楽しくなるソフトとして、これが入っていないMacはMacじゃない、とまで言える存在になったKeynoteとPages(おまけでNumbersも)。

これらのアプリケーションがワンパックになった「iWork」は、コストパフォーマンスが最高な、誰にすすめても後悔しない逸品といって間違いない。

iLifeとほぼ同時に出ると予想されるiWork。その、最新版がどうなるのか、少しだけ予想をしてみよう。


Keynote

iWorkのメインアプリケーションはKeynoteだ。文章の書けるKeynoteがPagesであり、Keynoteの表機能とグラフ機能を取り出したのがNumbersだと言ってもいい。

成り立ちを振り返ると、そもそもおJobs様が自分のプレゼンのために作らせたアプリケーションであり、彼の個人的なニーズを満たすために作られた。

ただ、その成り立ち自体がKeynoteの弱点でもある。

つまり……おJobs様はKeynoteでプレゼンを「する」ことはあっても、Keynoteの書類をゼロから「作る」ことは(あまり)ないんじゃないか?

彼だってヒマじゃないんだから(むしろ忙しい)、部下に書類を作らせるだろう。つまり、自分で作成したり修正したりしないので、修正系の機能が(作る機能にくらべて)弱いように感じられる。また、修正系の機能強化のニーズを軽く見てるんじゃないかとも思われる。

……だからなのだが、大量のページを含んだKeynote書類を「修正」したいという話になったとたんに、地味な手修正が大量に発生したりする。また、Keynoteの書類から特定条件で検索したデータだけを抽出するといった機能が弱い。もっと便利にできると良いのだが。

目下、AppleScriptへの対応機能が実装されてはいるが、まだ「指定ページ上にある指定オブジェクトのデータを取り出す」操作が十分にできるレベルにはなっていない。この機能がまともに使えるレベルになってくれば、まとめて一括修正といった作業も楽にできるようになってくる。

そういう根本的なレベルの話以外では、トランジション(場面転換)のパターンが増えるとか、新しいデザインのテンプレートが増えるとか…………iPhone/iPad/iPodなどの画面を直接Keynoteに出せるようになるとか、そういう機能追加が行われてもおかしくはない(毎度毎度、おJobs様がそれをやっているので、指をくわえてうらやましがっている開発者は多いはずだ)。

あとは、毎度毎度予想(期待)しては外しているが、「3Dっぽい見せ方のできるアニメーション」(遠近感のある楕円軌道を移動させられるとか)や、センスのいいグラフィック素材がついたら無敵……といったところだろうか。

iPad版のKeynoteとの互換性が高まるとなおよいが……そもそも、それはiPad版のKeynoteの出来がイマイチなだけであってMac版のKeynoteの問題ではない。

現行のPagesには書き出し形式に「Flash」が入っているが、これがなくなるのかどうか、という点は気になる。「HTML5」形式で書き出しが行える可能性については分からないが、ePub書き出しが行えるとよさそうだ。

iChatと組み合わせて、ビデオチャット中でKeynoteの内容を紹介するiChatシアター機能は、もう少し強化されるだろう。これは重要だ。


Pages

チラシ用には十分だが、論文作成には不十分。カジュアルな印刷物には最強だが報告書を書かせるといまひとつなApple純正ワープロ。だが、「貧者のInDesign」といえなくもないレベルに仕上がりつつある。

Pagesの強みは、ビルトインのレイアウトのセンスのよさであり、ワープロでありながらページレイアウト用ソフトに負けないほどの操作性。弱みは、つまらない報告書とか、つまらない町内会のチラシなどを作るのが苦手といったところだろうか。

長所を伸ばしながら弱点をつぶす、というのが理想だが……やはり、素材の数を増やすのが早道だろうか。あとは、ユーザーが作った書類を共有して、それをベースに使い回せたりすると面白い。

AppleScriptからの自動処理対応は、かなり進んできてはいるのだが、不完全さを感じるレベル。何から何までできるというわけではない。むしろ、できないことの方が多いので、もっと対応をすすめるべきだと思う。

Pagesで縦書きができればものすごく使いでが出てきそうだが、正直なところ……Appleがそれをやるかどうかは分からない。PagesがInDesignの代わりを目指すかといえば、目指さないだろうし……AdobeをMicrosoftが買収するようなことがあっても、やはりInDesignの代わりになるレベルは目指さないだろう。

これまで、Pagesは「紙への印刷」とか「PDF出力」がゴール地点だったが、「(標準電子ブック規格である)ePubのデータ出力」という新たなゴールが加わった。ePubの規格を満たせるように、Pagesの機能は決められていくはずだ。

Pagesは、ePubデータ作成&iBooks Store上への公開までを一気に行うソフトとして、一躍有名になる可能性がある。


Numbers

個人的にはぼちぼちというレベルでしか使っていないNumbers。iPad版のKeynote/Pagesは購入しても、Numbersだけは買う気になれなかった。

Numbersの進むべき方向性はいくつかある。ただ、それほど強いメッセージを発信しているソフトではないので、使いやすいように「改良」するのがバージョンアップ内容の中心となるだろう。

根本的な話をすれば、「なんのためのソフトなのか」がいまひとつ分からない。プレゼンのためのKeynote、チラシ作成だったらPages……までは言えるが、Numbersって何に使えるの? という問いに対して、明快な答えを見いだせないというところだろうか。

AppleScriptへの対応度は、まだ実用的なレベルに達していない。今回のアップデートでも実用的なレベルになるのかどうかは不明だ。Numbers上で選択範囲のデータが取り出せるので、一応最低ラインはクリアしているとはいえるが、まだバグっぽい実装がかなりあるので、そこが直ればラッキーぐらいの感じだろうか。

下世話なところでは、WordのかわりのPages、PowerPointのかわりのKeynote、ExcelのかわりのNumbers……という話になるのだろうが、ExcelとNumbersでは、世界観の大きさに違いがありすぎて(=Excelがサポートする機能範囲の大きさが大きすぎて)、いまひとつ説得力がない。

iPadが広く受け入れられるようになって、はじめてその存在価値(ExcelがなくてもNumbersならある)が光るようになってくるのかもしれない。

とりあえず、Numbersに「攻め」のための機能はあまりいらなさそうだ。他のKeynoteやPagesと同様の表現レベル(グラフとか表)をキープしつつ、ePubへの書き出しをサポートし、Excelの最新バージョンのデータをオープンできるようにする、といったところだろうか。


最後に、iWork 11の発売日についての予想を。基準となる日はMicrosoft Office 2011 for Macの発売日である10月27日(水曜日)。

これより前に出すか、後に出すか、同じ日に出すか…………もし、年内に出すのであれば「前に出す」と考える。「同じ日に出す」という選択肢はないだろう。

ただ、(最終リリース版の)ファイル互換性の検証などで(とくにExcelファイルの読み込み)、Microsoft Office発売後でないとダメということであれば「後に出す」ということになるのだろう。

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