体験をもとに語る、iPadにおける「電子ブック」(1)

ある日、いつものように電車の中でiPadで産經新聞を読んでいたら、前に立っていたご老人に話しかけられた。


 老1:それは、コピーできるのかい?

 自分:?????

 老1:コピー機で印刷できるのかな?


私は困惑した。

まず第1に、この混雑した地下鉄の車両の中で話しかけられるという経験が、これまでの人生において一度もなかったこと。次いで、質問の内容自体をすぐさま理解できなかったからである。

それでも一応、


 自分:印刷機能はないですね。画面で読むだけです。


口先だけで脳みそはほとんど使わず、お口なめらかに説明した。この東京の混雑した地下鉄の車内で見ず知らずの他人から唐突に話しかけられた経験など皆無であり、軽い驚きを覚えていた。


 老1:コピー機に乗せてコピーしたらどうなるのかな?

 自分:液晶画面なんで、やったら真っ黒になるでしょうね。

 老1:ダメなんだ?

 自分:ええ。紙をなくすための機械なんで、コレを使って読むのが基本です。


後日、実際にコピー機でiPadの画面をコピーして、自分の解答が正しいことを確認した。

電車の中で、自分はよくiPadについて聞かれる。私はAppleのスポークスマンではないのだが、何度も聞かれる。

邪悪な頭の中はともかく、ぱっと見が善良そうに見えるからだ……というのがウチの奥方様のご意見であるが、実際のところ、iPadを使っているとヘッドフォンが邪魔になるので……


 最近、電車の中でヘッドフォンを装着していない。


たぶん、話しかけられる理由はそこにあるのだろう。


だいたい、話しかけてくるのはお年寄りばかりである。妙齢の女性に話しかけられた、ということはない。絶対ない。本当にない。誓ってない。ホントだってば。信じてくださいよ。


だが、お年寄りに囲まれたり話しかけられたりした経験はけっこーある。


老人認知度がめちゃくちゃ高いぞ、iPad。「シルバーコンピュータ」とか「お年寄りホイホイ」みたいな存在だ。ウチの両親も、かなり欲しがっている。持って行ったのが友人から借りた借り物でなければ、たぶん置いて行けと言われたであろう。


しかし、誰もかれもが、iPadのハードウェアについてほめたたえるだけで、ソフトウェアについて言及した例はない。


ソフトウェアこそがこのマシンの真髄なのだが、画面がキレイだとか、薄いとか、軽い(?)とか……たしかにこれで重くてでかくて画面表示が汚かったら、誰も持ち歩かないだろうし欲しいとも思わないだろう。

Copyright By Piyomaru Software. All Rights Reserved