Carbon Dev MLを見ていたら、面白いスレッドがあった。
「Carbonは死んでしまった終わったテクノロジーなのか?」という話題だ。
議論はへっぽこ投稿主のレベルをはるかに超えた方向へと進み、ひじょーに遠謀深慮に富んだ投稿が相次いだ。さすが、歴戦のツワモノMac系開発者の集うCarbon Dev MLである。尊敬に値する。
結論からいえば、
・Carbonで書かれたアプリが10.6で動かなくなるということはないし、その先のOSでも(多分)動く
・Carbonは「64ビットに対応せず、新たな機能追加が行われない」だけである
・新たなOSの機能にともなうバグが出れば修正されることだろう。ただし、従来からあったバグが修正されるかどうかは疑わしい
ということだ。そういえば、Jedit 4.0がMac OS X 10.5では起動すらできなくなった。FileMaker 6.5やInDesign CS1が、起動はできるもののMac OS X 10.5上ではAppleScriptからコントロールできなくなった。これらは、みんなCarbonアプリだ。
新たに追加された便利な機能との連携が行えず、既存のサービスとの間でも連携が確保されないとなれば、アプリケーションはOS上で孤立してしまうだろう。アプリケーション自体の実行が保証されたとしても、OS上の各種サービスが利用できない状態で、それは果たしてMac用アプリと呼べるのだろうか? GUI部品のルック&フィールが大幅に変わって時代遅れ感バリバリになってしまうだろうし、そうなると「生きる屍」的な存在になってしまうことだろう。
Carbonに対してAppleがこの先、どの程度の注意を払うかということについては、誰1人として明言できないことだろう。
その中で、1人のAppleのエンジニアが語った話が印象的だ。
「これは知っておいていただきたいのだが、『Apple』という存在はない。この会社では何人かのエンジニアから成る無数のグループが存在していて、それぞれが独自の(技術的な)優先順位を持って活動している。優先順位を決定するのもグループごとの意思による。(その集まりがAppleを形成している)。
私個人の優先順位設定は、他のグループの優先順位設定に対して影響を与えない。仮に他のグループが同様の優先順位設定を持っていたとしても、私のものとは違う出発点からそこにたどり着いたに過ぎない……」
「アメリカ合衆国」という存在はなく、各州が自立性の高い政治を行っている……という例えだろうか。おJobs様の支配体制下では、おJobs様の恐怖政治によってエンジニアへの締め付けが厳しく、現場への締め付けは大変強いものになっていると思っていたのだが……各グループが割とてんでばらばらに行動しているようだ。意外な話である。
だいたい、おJobs様はアプリケーションの見た目とかフィーリングについては口やかましいが、アプリケーションやOSがどの程度バグを持っているかといった話には皆目興味がないだろう。ハードウェアやアプリケーション、OSの使い勝手といった彼にとって分りやすい一部の分野をのぞけば、割とエンジニアが好き勝手に仕事をしているのかもしれない。
去年、思うところがあってAppleのエンジニアがどのように活動しているか、MLの過去ログから分析を行ったことがあるが、かなり深夜に及ぶまで仕事をしていることが伺われた(そして、いくら忙しい時でも、3時のお茶の時間はしっかりとっているようだ)。
出社も割ときちんとした時間に行われているようであり、これだけ長時間勤務している割に、早い時間に出社していることから……かなり通勤時間が短いことが伺われた。想定通勤時間は30分以内だと思っている。
▲某CEOの家から会社まで直線距離で15kmほど。道が混んでなければ20分ぐらいで着く?
Google Earthで調査したところでは、クパティーノ近辺は住宅地のようで、会社の近所に住むとしたら家賃はかなりお高くなるだろう。長年勤めている社員はともかく、最近働き始めた社員は、会社の近辺には家を借りることは難しそうだ。このへん、長年勤めている社員がいる一方で、社歴の短い社員がホイホイ入れ替わる理由の1つになっているのではないかと考えている。
何から何までおJobs様に命令されている従順な小学生のような集団、恐怖政治で監視されまくって長時間労働を強いられているブロイラー集団、IT業界における「ああ野麦峠」…………という印象を持っていたので、かなり意外であった。
今回のこの話は、すべての真実を含んでいるわけではないだろう。だが、Appleという存在を理解する上で重要な要素であることは間違いない。