Appleが自前でノースカロライナ州にデータセンターを建てる理由

Appleがノースカロライナ州にデータセンターを建設するとか。ただ、これが何のためなのかがよく分らない。 

mobile.meのサーバー強化のため……だったら、別にいままでのサーバーセンターに借りるラックの数を増やせばいいんじゃなかろうか。自前で建てるというのがとても気になる。これまで、Appleはコストを重視して自前のデータセンターなどは持とうとしなかったはずだ。 

なぜノースカロライナ州なのか……というのは、ひたすら税金優遇措置のためという見方が強い。いくら東海岸とはいえ、ずいぶん南部のほうだし……大西洋から光ファイバーが陸(北米)にあがってくるポイントはもっと北にあるはずだ。ネットワーク的に欧州との間の距離が近い、とかいう特徴はないはずなのだが……。


目的については、iPhone 3.0で復活するプッシュ通信サービスのため、などといった見方もあるようだが……自分はそうは思わない。 

データセンターはまだ着工されてもいないし、それなのに間もなくリリースされる予定のiPhone OS 3.0のサービスのために、リリース間近になって
「必要なことに気付いたんでデータセンターを作ることにしました〜」などというのは単なるおバカさんである。 

データセンターを建設するとしたら……規模にもよるが、用地取得やら設計やら建築やらで、最低でも1年ぐらいはかかるのではなかろうか。つまり、いま建てるの建てないのという話をしているのは、最低でも1年以上先に発生する「何か」に対応しての設備だということだ。

あるいは、別の角度から見ると面白い話が見えてくるかもしれない。自前でデータセンターを建てるのは、そこで何を行っているかを
「見られないようにするため」ではないかという話だ。 

たとえば、いまもどこかのデータセンターにAppleは大量のサーバーをホスティングしているはずだが、その中には「何を使っているのか見られたくないもの」もあるはずだ。単なるオンラインストレージやら何やらであれば、別に自社製品やもっとお安いストレージ製品で足りる。 

そこで
自社製品を使わないタイプのサービスが必要だとしたらどうだろう。しかも、大量に……。 

思いつくところで、Appleが切実に必要そうなのは
Exchengeサーバーのサービスだ。iPhoneのアドレスブックやらMacのアドレスブックを個人ではなく組織単位で共有しようとしたときにExchengeサーバーを利用するのがベストだろう。だが、Exchengeをユーザーに導入しろというのも敷居が高い。マイクロソフトがExchengeのサービスを提供しているが、マイクロソフトに対して契約してくださいというのではいろいろとよろしくない(多分、心情的に)。みすみす、大量に需要が発生することが分っているんだから、そのままよそにスルーするのではなく、自前でサービスを行ったら利益が出てよい…………などと考えてもおかしくはない。 

そこで、ExchengeサーバーをAppleが自前で大量に用意し、ユーザーにそれを有償でサービスするというシナリオを想定してみた。 

そのExchengeサーバーを大量によそのデータセンターにホスティングしているという状態が好ましくないと考え、将来の需要増に備えてデータセンターを建てようとした……とかいう話はないだろうか。 


考えていたシナリオはほかにもある。 

実は、真っ先に思いついたのは……iTunesの楽曲データをユーザーのコンピュータのHDD内ではなくAppleのサーバー側に置いて使うというサービスだ。これなら、iPod/iPhone側は容量に関係なく自宅のPCで購入した楽曲を外出先でもすべて聴くことができる。 

ただしこれだと……iTunes Storeからダウンロード購入した曲だけなら問題はないのだが、ユーザーがPC上でCDからリッピングした曲データをサーバー上に置いた段階で、(日本の)著作権法上いろいろとまずいことになる(米国ではどうか知らない)。 


無理矢理考えれば、まだまだある。 

Appleは将来のiPhoneにビデオチャット機能を付けようと考えており、このためどこのスイッチやらのネットワーク機器が入っているか分らないデータセンター施設ではなく、きちんとiChat AVのデータを流せる「iChat AV Savvyな」データセンターを建てる必要が生じたという説だ。実は、サーバーではなく
ネットワークの足回りを自前の規格にする必要があったので、自前のデータセンターを建てた……というシナリオ。ただ、iPhoneを用いてのビデオチャット機能はすぐにでも実現しそうな雰囲気なので、建築のタイミングが遅すぎるという印象。 


Appleのmobile.meサービスでは、WebページのホスティングとGroup機能の提供をやめた。どちらも中途半端(転送量制限がきついし)なので、別にやめても全然いいと思うのだが、いまひとつAppleのWeb系サービスは行方が見えてこない。もっと情報がないと確度の高い予想は行えないことだろう。

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