ZOOMのICレコーダー製品に大ウケ

ZoomのICレコーダーとiPod

大きさの比較

マイクとカメラの大きさ

自宅に友人を招いてさまざまな話に花を咲かせていたところ、新たにICレコーダーを買わなくてはならない、という話になった。 

Podcastingのノウハウについて研究成果を披露していた中で、やはり録音時のチャンネル・セパレーションというか、左右どちらから声がしているかという情報はものすごく大事ではないか、そのために議事録音程度のICレコーダーでは不十分という話になったからだ。 

ICレコーダーの選定については、だいたい目星を立てていた。値段と性能のバランスから、既存メーカーの上位機種は魅力に乏しいが、先日実際に目にした製品のチャンネルセパレーションの素晴らしさと価格の安さが群を抜いていた。 

それが、ZOOMのH4だ。 

さっそく、実売価格と評価、およびこの製品のライフサイクルがどうなっているかを調査した。 

実売価格は、最安値で1万8000円強。乾電池2本で動作し、SDカードに24bit 96KHzでPCM録音できるバケモノがこの値段というのは驚愕に値した。 

だが、新たにICレコーダーを買い足すのではなく、すでにICレコーダー(SANYOのXacti ICR-PS285RM)を持っているのだから、チャンネル・セパレーションがはっきりした外部マイクを購入すればよいのではないか、というプランもあった。 

高級ICレコーダーについている、交差した2本のマイク。これは、X-Y方式と呼ばれるものであり、チャンネルセパレーションと音の広がりと奥行きを両立させるためのセッティングなのだという(その場で調査して推測)。プロがステージ録音を行う場合にはマイクを交差させてセッティングし、それぞれを左右のチャンネルとして合成するようだ(このほかにも、さまざまなマイクのセットアップ方式があることを学習した。本当に音響というものは奥が深い)。 

X-Y方式の小型マイクは、iPhone用やWalkman用の専用のものは見かけるのだが、マイク端子に取り付けるようなものはあまり見かけない。ICレコーダーに取り付けるだけでチャンネル・セパレーションが改善するのであれば、欲しいという人はけっこういそうなものなのだが……。 

そこで議論した結果、プロは自前でX-Y方式のセッティングを、普通のマイクを使って行うだろうし、また、ただ単にマイクを2本クロスでつなげば良好な録音状態が確保できるわけでもなく……そんな製品を作っても、プロは見向きもしないし、一般ユーザーには効用が説明しづらいといった中途半端な存在になってしまうだろう。そのため、「外付けX-Y方式マイク」といったジャンルが成立していないのだろう、という話になった。また、iPhoneやWalkman向けの「なんちゃってX-Y方式マイク」はそれほど良好なチャンネル・セパレーションを得られないだろう、とも。 


既存の会議録音用のICレコーダー2個を使って、2人の人間が同時に録音。それぞれ口のすぐ前にICレコーダーを持って、好き放題しゃべる。録音した音声ファイルをGarageBandに持って行って、LチャンネルとRチャンネルとして合成………ということも実験してみたのだが、2つのファイルの同期が著しくめんどくさい上に、おそらく、完全に同一機種で製造ロットも合っていなければ、微妙に録音スピードに「差」が出るのではないか、という懸念もあった。安上がりにチャンネル・セパレーション改善を実現するよいアイデアだと思っていたのに残念だ。 

結局、マイク端子に刺すだけで使えるようなX-Y方式の外付けマイクが見つからず(注:あとで探したらありました)、ICレコーダー2個を利用したお手軽チャンネル・セパレーション作戦が失敗し、冒頭のように「じゃあ、高級ICレコーダーを買うしかないんじゃない?」という話になった次第だ。 

……で、24bit 96KHzのPCM録音が行えて、True X-Y方式のマイクを備えるZOOMのH4の実力については、実際にレコーディングエンジニアであるSutohさん所有の実機で確認し、非常に感銘を受けていた。外見が野暮ったくてでかいことと、操作性があんまりよくないことに目をつぶれば、目下最高のコストパフォーマンスを発揮してくれることだろう。 

ただ、ここで単純な疑問が出てくる。これだけ安いということは、この製品に後継機種が登場してきており、在庫処分が行われている最中なのではないか、ということだ。 

やはり、調べてみると「H4n」という、操作性とルックスと性能を向上させた後継機種が登場しており、H4は在庫限りという状態のようだ。H4nは2.6万円前後が最安値。この2機種の性能差は価格の差ほどにはないだろう、とも思える。ただ、H4同様に「でかい」というのがひっかかる。 

そんな調査を行っていると……「Q3」という風変りなレコーダーが出ているのを見つけた。640 x 480という、こんにちではいささかチープな解像度の(先日登場した新iPod nanoと同じ解像度の)ムービーを撮影してYoutubeなどにアップロードする製品なのだが……なんと、H4nと同等のTrue X-Y方式のマイクを備え、24bit 96KHzのPCM録音が行える(汗) ビデオ録画機能つきPCMレコーダーと呼ぶべき、一般のニーズとはおそろしくかけ離れたバランスで生み出された製品のようだ。 

実際に購入して使用してみた、というレポートはなかなか見つからないが、製品のユニークさ加減に大受けした次第。 

http://www.zoom.co.jp/japanese/products/q3/ 

しかも、このZOOMという会社がニホンの会社であり、楽器や録音マニアのための製品を作っている、という特異なキャラクターの持ち主であることが、きわめて短時間で理解できた。 

もうちょっと値段が下がったら、このQ3を「PCMレコーダーとして」買ってもいいんじゃないかと思った。H4nと同等の録音性能が、はるかに小さい筐体サイズで実現されているため、「持ち歩きやすいH4n」として考えると納得できてしまう。本機のビデオ録画機能はあくまでオマケとしてとらえるべきなのだろう。

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