イメージスキャナ市場動向を探る

以前に、Mac用OCRのソフトウェア製品がさっぱりだという話を書いた。Macユーザーの共感を得たのか、それほど面白い話でもないにもかかわらず、妙にアクセスが多かった。

かようにMac用のOCR市場がさっぱりなのは確かだが、OCRソフトウェアがイメージスキャナの台数以上に売れるということは考えにくく、OCR市場はイメージスキャナ市場の動向に大きな影響を受けているといえるだろう。

その肝心のイメージスキャナの市場動向というものはどんなもんなのだろうか? 

だいたいのシナリオは見えている。イメージスキャナの売れ筋がフラットベッド型からプリンタ複合機へと移行し、イメージスキャナ単体での売り上げが下がってきたのだ。ただ、どの程度下がったのかという数値は分らなかった。

そんな折、JEITA(電子情報技術産業協会)のページに市場動向調査が掲載されているのを見つけた。


JEITA(電子情報技術産業協会)はJEIDA(日本電子工業振興協会)とEIAJ(社団法人 日本電子機械工業会)が2000年11月1日に統合して誕生した。エレクトロニクス技術や電子機器、情報技術(IT)に関する業界団体で、パーソナルコンピュータや周辺機器などの市場動向の統計調査を行っている(このへん、Wikipediaの請け売り)。

そんなわけで、組織統合によるものなのか、統計調査結果は掲載されているものの、イメージスキャナについて1999年から2007年まで動向を追いかけてみたのだが、2001年だけ内容がおかしい。


2001年は国内市場のみの数値となっており、輸出を含めたトータルの値になっていない。

だいたい、総出荷台数のうち2割を日本国内向けが占めると仮定すると、2007年においては国内総出荷台数は130万台程度。数値のうえでは、2001年の164万台から30万台程度のマイナスに見えるが、その内訳は大きく異なる。

昨今ではパーソナル向けが大幅に減り、電子ファイリング用途の業務用のADF(オートドキュメントフィーダ)付きが大幅に伸びているのだという。台数ベースでは減りつつも金額ベースで伸びているという現状は、パーソナル向け市場の落ち込みが非常に大きなものになっていることを物語る。

そもそも、パーソナル向けのイメージスキャナは印刷物や写真の取り込みを目的としたもので、印刷物についてはパーソナルユースであってもADFタイプに移行、写真については従来の銀塩写真機からデジカメへの移行が行われるにおよんで、フラットベッドタイプのスキャナへのニーズの落ち込みは激しいことが伺われる。

「コンシューマ向けスキャナ(ADF無しまたはADF 10ppm以下/A3以下)が,コンシューマ向けMFP(インクジェット複合機)にシェアを奪われ,台数(前年比7%減),金額(9%減)ともに減少した一方で,主に業務で紙文書の電子化やOCRなどに使用される業務用スキャナ(ADF 10ppm超/A3以下)が,オフィス内での紙文書電子化の需要拡大により,台数(33%増),金額(39%増)とも大幅な伸びを示したことによる。

 イメージスキャナの総出荷は,コンシューマ向けスキャナの需要減少により2003年以降連続して減少していたが,総出荷台数の19%,金額の69%を占めるに至った業務用スキャナの需要拡大や小型で低価格なADFスキャナの普及により,2007年に増加に転じた。(2007年情報端末関連機器の世界・日本市場規模および需要予測)」

そんなわけで、フラットベッド型のオーソドックスなスキャナから、ADFタイプのスキャナが市場で幅を効かせているという現状を認識しておく必要があるだろう。

そこで、各社のADFタイプスキャナの現状を調べた。ADFタイプはパナソニック、富士通PFU、キヤノンの3社が製品を出しており、パナソニックとキヤノンが業務用の製品展開を行っており、PFUの一部製品がパーソナル向けといった製品構成になっている。PFUのスキャナにMac OS X用のドライバが提供されているのは例外中の例外といったところのようだ。

パーソナル向け製品の構成比率がきわめて少ないことから、これらの製品がMac用となっていることはまれで、PFUのScanSnapシリーズやその上位機種のみが使用できるといった状況。さらに、これらの製品にMac用のOCRソフトウェアが同梱されているケースはない。

一方、プリンタ複合機については各社プリンタメーカーの系列ソフトウェア会社によるOCRソフトウェアが添付されていたりで、こちらについては一応Mac版のものが添付されているケースもあるといった程度だ。

そんなわけで、OCRの市場は各メーカーの系列会社に分断され、サードパーティのOCRソフトウェアがスキャナに添付されるといった展開は難しいものになってきたことだろう。

かように、業界構造的にもMac用OCRソフトがどどーんと出てくる気配というのは感じられない。あるとすれば、海外のOCRソフトメーカーが日本語にも対応するというケースだろうか。

まあ、そこまでシャカリキにならなくても、最近のIntel MacであればParallelsなどでWindowsを動かして、Windows用ソフトウェアを動かしても実用的なレベルで使用できる。ますます国内のMac用OCRソフトウェアメーカーに期待できる状況ではなさそうだ。

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