先日のQuickSilverは、DragThingのように「画面の特定の場所をクリックして起動」するものではなく、マウスカーソルが画面上のどこにあっても、ランチ用のウィンドウUIを自由に呼び出して、アプリケーションを起動できるというものだった。たしか、キーボードショートカットでUIを起動するようになっていたはずだ。
だが、アプリケーションの「名称」をキーボード入力する点が気になった。それではコマンドラインからアプリケーションを起動するのとさほど変化がない。インタフェースとしては「退化」ではないかと感じた部分もあった。
同じく、キーボードショートカットで起動するランチャーでありながら、アプリケーション名称の入力を必要としないものをたまたま見つけた。
画面上の座標とアプリ起動を切り離し、マウスカーソルがどこにあってもアプリ起動用UIをキーボードショートカットで呼び出し……かつ、アプリ名称の入力といったユーザーに緊張感を強いるものではなく、アイコンを円盤状のUI上に配置し、その中からマウスで選択するという操作が行えるランチャー。それがTranpolineである。
大量のアプリケーションの中から選択するのではなく、いつも使う10個前後のアプリから選択して起動するだけなら、このTranpolineのほうが「Macらしい」インタフェース、「Macらしい」操作性なのではないかと考えるものだ。
自分は、つねに「Macらしい」操作感とか「Macらしい」インタフェースというものを自問自答しながらアプリケーションを作ったり、評価したりしている。
QuickSilverは、自分の中で定義していた「Macらしさ」から大幅に逸脱するユーザーインタフェースだったので、少々驚いてしまった。ここまでユーザーに緊張感を強いるインタフェースというものが許容され得るのか、という驚きだ。
Tranpolineでは、アプリの選択時にアイコンを表示し、かつマウスでアイコンを選択するという「緊張感の少ない」インタフェースを提供している。これは、自分の定義している「Macらしさ」に近いものだ。
ただ、ここまで考えると……どうせなら画面をいっぱいいっぱいまで使って、Dashboardみたいに半透明のウィンドウで覆ってしまって、その上でまったく異なるエンターティンメント性の強いUIを提供するランチャーというものがあってもよいのではないかと思うようになった。
アイコンが画面上をぐるぐる回るとか、アプリケーションについての補足的な情報が表示されるとか、それがアニメーションでなめらかに(ゲーム画面みたいに)表示されるとか。
Classic Mac OSからMac OS Xになって、実用性もさることながら、エンターティンメント性というものがアプリケーションにも問われるようになってきたと感じている。ゲーム系のテクノロジーをもっと一般のアプリにも投入できたらよいのではないか? そう考える昨今である。
そう考えると、DragThingあたりはインタフェースが硬直化しすぎていて、完全に「古典」の領域に入ってしまっているかもしれない。少々見直しを行ってもよいころではないだろうか。
・キーボードショートカットによる呼び出し
・エンターティンメント性の高いオーバーラップ系画面UI
あたりが検討項目だろうか。
後日談:調べてみたら、DragThingにもグローバルショートカットキーの機能があり、他のアプリケーションが最前面にあっても、ショートカットキーでDockを呼び出すことができた。しかし、そのデフォルトのショートカットがMini vMacの画面の拡大ショートカットとかぶってしまっていているという、一般ユーザーにはまったく関係のないマニアックな弱点も明らかになった。ちなみに、DragThingのグローバルショートカットは設定変更が可能である。