ウチでは、
の条約締結により、ゴキブリ退治を行うのはわが部隊の任務ということになった。哨戒行動および早期迎撃が主な任務である。さらに、撃墜した敵機の清掃なども任務となっている。領土内のトラップ設置も精力的に行っているところだ。
従来、わが軍では射程距離が短く火力の弱い旧式装備で苦戦させられてきたが、新型兵器「ゴキジェット・プロ」の戦線投入により、それまでこう着状態にあった戦線を一気に挽回できるようになった。撃墜率が向上し、ロングレンジからの狙撃も有効になったのだ。
新型兵器の戦果はめざましく、1日に3機から4機の敵機を迎撃することすら珍しくない。しかも、この戦果はコンスタントにたたき出されているのである。
順調な戦果とは裏腹に、軍首脳部にはひとつの悩みがあった。
「こんなに敵機を撃墜しているのに、いっこうに減らない。全滅したっておかしくないほどの戦果だが……」
偵察部隊が出されることになり、敵の侵入経路の捜索が精力的に行われた。
偵察部隊からの報告は、耳を疑う内容であった。
「隊長! 敵は……正面正門から堂々と入ってきております!」
そうなのであった。さすがにこれには驚いた。
よりによってコックローチどもは、玄関のドアのすき間から堂々と「ちょっくらお邪魔しますよ」といわんばかりに侵入してくるのである。いや、その堂々たる侵入っぷりはすでに「お礼参り」と呼ぶにふさわしかった。
もともと、アパートの角部屋には敵機が集まりやすいという傾向がある。よそからひょこひょこと移ってくるのだ。部屋の中の敵機を殲滅しても、あとからあとから外敵の侵入を許しているわけである。我が家はまさに、文字通りの激戦区といえた。
そこで、玄関ドア周辺にホウ酸団子系のトラップをしかけ、巣に持ち帰って自爆してもらおうという作戦に出た。このトラップにより玄関方面からの侵入を減らすことには成功したのだが、ほかにも侵入経路はあったのだ。
窓である。
この季節、カラダに悪いクーラーを極力かけず、網戸にして自然の風をたよりに生活しているのだが、敵機は網戸のすき間から「ちょっくらごめんなすって」とばかりに侵入してくるようなのだ。
こちらにもトラップの設置を行う。
ほかにも、地下に潜ってゲリラ化した敵残党もいるようなので、機を見計らって戦術核「Baru-3」の戦線投入も検討されている。
しかし、戦況は一瞬たりとも安心できない状況だ。先日も自爆テロ事件があり、靴の中からつぶれてひからびた敵機が発見された。よりによってそんな所から……履く前にちゃんと靴をひっくり返してコツコツと床にたたきつけて、いないことを確認してから履いたというのに。
この自爆テロに巻き込まれたわれわれに涙はなかった。すでに、この激烈な戦争の前に流すべき涙もなく、粛々として敵機を迎撃するのみである。
「いつまで続くんだ……?」
誰か教えていただきたい(涙)。