完全に世間の予想を裏切って、AppleはMacWorld SFで次期Mac OS X, "Leopard"を発表しなかった。
もともと、基調講演の時間もそれほど長いわけでもなく、その時間内できちんとした説明を行おうとしたら、いくつかの製品に焦点を当てて、対象を限定する必要があるというのは理解できる話だ。
そのためにMac OS X 10.5, Leopardは別の機会に発表することになった。実に分かりやすい話である。
だが、気をもませるものである。今回、Leopardがクリアしてくる技術的なハードルは１年以上前から予想できたものだった。マーケティング的見地からさまざまな他の潜在的な競合製品に対して優位性を確保するためにクリアすべき課題と方向性は見えていた。
それなのに、この１月のタイミングでもLeopardの全体像は見えてこない。割とどーでもいい部分が明らかになっているだけである。たとえていうなら、本来カレーライスであるはずの料理が、カレーなしで出されてきている印象を受けるのだ。皿やごはんや福神漬けがのっているにもかかわらず、肝心のカレーがかかっていない状態とでもいおうか。
その「カレー」にあたる部分は、実はものすごく小さい要素なのかもしれない。単なる些細な思いつきやデザインによって使い勝手を大きく変えてしまうような……つまり、極度に模倣しやすい種類のものだ。
たとえば、ウィンドウなどのUI（User Interface）デザイン。開発者向けに公開されているものは最終的なUIデザインを反映させたものではない、という見方は可能だ。iPhoneと同様の方向性を持つUIを実装とかいうのは実にありそうな話である。
また、ユーザーがGUI上で行う操作そのものを「予測して」補正するとか、過去の操作を学習しておき、期待値と大きく異なる場合には「本当にこれでよいか？」と確認するといったアプローチもある。キーボード入力の予測変換をGUI操作に応用したもので、初心者のケアレスミスを防ぐといった効果が期待できる。
Appleの「隠し球」がUI系だろうという予想を行いつつ、Leopardがいつ発表されるのかというのが最も気になる点である。これについても検証しておこう。
発表日については、最短で１月末。最長で６月という見方ができる。ただし、「spring」の定義を見直すことで潜在的には2007年の9月31日までその可能性がある（Appleの会計年度の切れ目がそこなので、それまでに販売を開始して利益を計上しておきたいだろう）。
もしも、余裕でもってリリースを遅らせているのではなく、「技術的な問題」「解決できない課題」によって遅れているのであれば、12月のクリスマスシーズンまで可能性は広がる。理由は後述するが、リリースが遅れる分には逆に安心できる。
そして、肝心の発表日だが……最もセンセーショナルな効果が期待できる日付があるとしたら、それはWindows Vistaの発売日（１月末）だ。Vistaの発売日にわざとLeopardの発表日をぶつけ、出たばかりの新製品との比較（優位性の紹介）を大々的に行おうというのだ。
「堅実なプラン」を採用するなら、２月の１〜２週目の水曜日に記者発表を行い、３月24日もしくは４月24日に発売というパターンになるだろうか？
iPhoneのインタフェースの出来がよかったので、iPhoneのフレーバーをMac OS X自体にフィードバックする作業を行っている可能性もある。この場合には、おそらくiPhoneの発売前で………新しいハードウェアを発表しそうなタイミングということで、５月のWWDCというのもありそうな線である。Leopardインストール済みのハードウェアとLeopard自体を同じタイミングで発売するのだ。
とにかく、いつもどおりの「きつきつ」のスケジュール（１年ごとにOS更新！）で全体の開発が進められると、いつもどおりの「バグだらけ」な状態でのリリースと、お決まりの「３〜４発アップデータが当たって完全体」という、（開発者にとって）実に腹立たしい状態になってしまう。とくに、AppleScript系は他の開発環境と違い、Script処理系にバグがあると回避のしようがないため、バグについてなおいっそう神経質になる必要がある。
これ以上開発者から愛想を尽かされないためにも、Appleは拙速すぎるリリースを厳に戒めるべきだ。別に、10.4が安定してバグのない環境になれば、10.5などいらないのだが、実際のところそうではないために安定した10.5が求められているのだ。これは別に10.4に限った話ではなく、10.0のリリース時からだ。
10.5という大きな節目を迎え、Appleも正念場を迎えていると言えるだろう。お前なんぞに言われたくない、という指摘はあるだろうが（悪）。