TypeTraceに見るプロセスそのもののオープン化

昨日のDEMOsaで面白いソフトや素晴らしいプレゼンターの方々にたくさん出会った。ある意味、予想外というよりも「お腹いっぱい」という感じで、いろんな「ネタ」を消化するのに時間がかかっている。分析して、いろいろな角度から考察を加え、パーツを分解して自分の内部言語に変換し、思考部品としてストックしておくのだ。

DEMOsaのプレゼンの中には、お名前はかねがね伺っておりながらも、ケレン味たっぷりで演出過剰、かなりうさんくさい感じがして敬遠していたソフトもあった。

それが、TypeTrace

「タイプした経過を記録しておく」という内容は知っていたのだが、それがすべてではなかった。書くのに要した時間を記録してあり、間隔が空いたところは「考えた末にそれを書いた」と仮定して文字サイズを大きく表示する。記録した内容を5倍速で再生、といったこともできる。ちなみに、AppleScriptには対応していないが問題ない。

半信半疑でダウンロードして試してみたところ……本当だ。自分もけっこう打ち間違いをしているし、何回もしつこく直していたりする。気付かなかった(汗) プレゼンを聴き実際に試してみて、自分のTypeTraceに対して抱いていたイメージが誤りであることが分った。大変失礼いたしました。ごめんなさい。

かように、思考の過程そのものを記録できるというのがTypeTraceのウリである。これに対して、自分は文章/テキストよりも「プログラム」の記述履歴を記録しておくことへの可能性を想像し、このアイデアの実現に興味を持った。とくに、入門者に対してプログラムの作成過程を分ってもらうことには価値があるだろう。

だが、TypeTrace上でプログラムを書くことはできない。プログラムを書く環境そのものでなければ、作成支援機能などを使えない。AppleScriptであれば、スクリプトエディタ上の記述履歴を記録したいが、1文字1文字記録する必要などない。その時点のスナップショットを「バックアップ」としてではなく、過程そのものを記録するために作成するのだ。……案外、テキストをまじめにとっておくより、画面をピクチャやムービーとして記録しておいてもよいかもしれない。

過程そのものに意味があるといえば、音楽の作曲などもそうかもしれない。また、アイデアがひらめく条件といったものを記録しておいてもよいだろう。だが、テキストで完結するものではないし、あくまでもテキスト&キーボードにこだわるという考えがあったからこそTypeTraceが成立し得たのだろう。

過程をオープンにするというのは確かに新しい考え方かもしれない。オープンソースなどもその過程がオープンにされているという意味では同じなのかもしれないが、途中から参加した人には(それまでのやりとりが)分らないことも多いだろう。新規参加者が入りにくい場所というのは、過程が分りにくかったりオープンになっていないような場所だ。なんか、ニホンの社会そのもののような気がしてきた(汗)。

「オープン・プロセス」とか「プロセス・プレゼンテーション」みたいな言葉を作り、過程そのものにスポットを当てることで、ニホンの大企業に蔓延する「悪しき成果主義」(パスを出したりフォローする奴よりも、シュートを決めたやつ1人が偉いとか)にメスを入れられるきっかけになるかもしれない。

まあ、そこまで大上段に振りかぶらなくても、プロセスを明らかにすることで、新規参入者が増えるとかいった効果はあるだろう。AppleScriptのサブルーチン集サイト「AS Hole」を立ち上げてみたものの、サブルーチンという「成果」だけあっても、なんかピンと来ないな〜、と思っていたのだ。いろいろ考えていたところに、TypeTraceによるプロセスのオープン化みたいな話を聞いたので、「この考え方は使える」と思った次第。

プロセスのオープン化については、ちょっと実験してみると面白そうだ。

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