目下市場最強のMac用プロジェクト管理ソフト「Project X」の実態に迫る(1)

Project Xを評価する機会を得たので、このプロジェクト管理ソフトをじっくりと料理してみた。

■プロジェクト開始段階での使い勝手

いろいろ、IT系プロジェクトとかソフトウェア開発プロジェクトとかのテンプレートを選べるようになっている。ただ、予算申請とかいろいろと会社ごとの事情によるものとかプロジェクトの内容によっては合わないものも多いので、とりあえず空白の「Blank」プロジェクトを選んで進めたい。

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新規プロジェクトを作成すると、タスクのネットワーク表示画面になる。ネットワーク表示というと分かりにくいが、マインドマップのインタフェースを取り入れた操作系といえば分かりやすいだろうか。四方八方にノードを伸ばしてあーでもないこーでもない、と試行錯誤しながら構想を練るのに適しているインタフェースだ。

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ただ、いまひとつ日本語入力で難がある(漢字変換時に次候補を表示できなくなる)ため、ちょっと辛い。あと、このノードは「タスク(黄)」「サブプロジェクト(青)」「マイルストーン(赤)」の3種類のどれかを指定できるらしいが、タスクとサブプロジェクトのどちらが上位概念なのか色の違いだけでは分かりにくい。

ネットワーク表示画面は、Project Xのメイン画面になっていて……とりあえずプロジェクト管理者はこの画面を基点にさまざまな機能やビューを呼び出すことになる。

電話やメールのやりとりは、これらのノード上の……

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歯車アイコンをクリックすると……電話の場合にはメモを、メールの場合にはメール送信を行えるようになっている。ここからメール送信すると環境設定で指定されたメーラーに対して送信要求が行われる。

このへんの処理は内部でAppleScriptで行っている(アプリケーション・バンドルの中に入っている)。出荷時にはMail.app用のScriptしか入っていないが、適宜テキスト形式でAppleScriptを書いておけば実行されるようなので、たとえばEntourage 2008用Scriptを用意するのもどーーってことはない。拡張はしやすそうな構造だ。

電話については、本来ならその内容を録音してファイルに保存して呼び出せるようにしておきたいところだ。このあたり、何か補助ソリューションが必要と思われる。テレホンピックアップを電話につけて、相手の声も同時に録音できるようにするとか……IP電話で会話して、その内容を常時録音するとか。

ネットワーク表示画面では編集しづらい場合には、アウトラインプロセッサのようなアウトライン・ビューも利用できる。手早く入力したい場合にはこちらの方がよいだろう。

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これまでさまざまなMac OS X用プロジェクト管理ソフトを使ってみたが、こうしたタスクの入力作業のしやすさはProject XあるいはOmni Planがやりやすい。FastTrack Scheduleはわけの分からない操作系になっており、行と行の間に新たにアイテムを追加しようとすると……まだ何も書き込んでいない空白の部分から空白行を移動させなくてはならなかった。


Project Xでは、これらのほかガントチャート表示の「タイムライン」、

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iCalライクな「カレンダー」表示、

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進捗度やミッション分析のための表示などもある。

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きわめつけは、レポート用の表示で……概要報告書、収支報告書や、活動報告書などの画面も用意されている。眺めていると、まるでベンチャー企業の経営者が出資者に対して行う報告を手短に済ませるために作った道具、といった印象を受ける。

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ニホンの企業内のプロジェクトでは、コストに関してはグロスで請求するパターンが多いので、実はコスト面での管理という機能はそれほど求められない場面が多いように思われる。

このあたり、プロジェクト管理者とひとことに言っても、エグゼクティブ・クラスの……予算執行権限から人事権まですべての権限を持っているえらーい管理者もいれば、決まった仕事の実務面のみ担当する管理者までいるわけで……本ソフトの開発チームには、そのあたりの「視点」の設定にバリエーションを持たせることを検討していただきたい。


■次第に明らかになってきたProject Xの実力と限界

各種の情報入力を行いやすいように、ネットワーク、アウトラインなど複数の画面を用意していることは、非常に高く評価したい。カレンダー表示やガントチャート表示画面も美しく、仕事をしようという気にさせるものがある。また、未検証ではあるが.macを介しての情報共有なども他に類を見ないものだ。ユーザー同士で進捗度をシンクロする機能もあるようだ。

ただし、本ソフトはヘビーユーザーからのフィードバックをまだそれほど受けておらず、荒削りな部分もやや散見される。そのうえ、Javaで開発されているようで……将来的にもAppleScriptによるスクリプティングに対応できないソフトと考えたほうがよさそうだ。

データをインポートできるファイル形式が意外なほど少ないことにも驚かされた。CSV形式のファイルかMPX(Microsoft Project形式)のファイルしか読めないらしい。OPMLのデータが読めるとか、Mindjet MindManagerのデータが読めるぐらいのことはしてほしいのだが……それができないのであれば、AppleScriptでインテグレーションすることになるわけで、そのあたり、本ソフトがAppleScriptに未来永劫対応できないJava製アプリだというのは痛い。

本ソフトの決定的な弱点は、日本語環境での検証がまったく行われていないためか、リソース管理系の機能がうまく動いていない点である。アドレスブックと連携しているのだが、どうもこれがよろしくない。他のジャンルではブッチギリな機能を提供しているにもかかわらず、リソース管理機能だけはいただけない。

他のソフトと比べてみて……操作の簡単さはOmni Planの方が上だが、Omni Planは寡黙なソフトであり、それほど豊富な機能を提供してくれるわけではない。FastTrack Scheduleと比べると、インタフェースの洗練度は5年ぐらい先を行っているが、ユーザーからのフィードバックはこれからといった段階である。

いろいろ問題点はリストアップしてみたが、本ソフトが他のプロジェクト管理ソフトとは次元の異なるテーマに挑戦しており、開発者たちが実際に現場で使っているという「活きの良さ」を強く感じる。現場の知恵と経験をプロジェクト管理ソフトに注ぎ込んだソフトとして個人的に大きく期待している。

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