iPhoneにPowerPC?

この内容に関しては、本人もあまり信じていないのだが……とりあえず、材料を元に書いてみた。ごくたまに、「そんなバカな」という仮説から真実にたどりついてしまうこともあるので、こういう「思考実験」はまったくの無駄というわけではない……たぶん。


P.A. Semiの買収が高速ARM系プロセッサの開発につながっているのではないか、という読みがあったが……どうもARM系のセミナーのレポートなどを読んでいると、1GHz超のハイパワーかつ低消費電力なチップが登場したという話も聞かない。

そこに、IBMの幹部をAppleが引き抜いたというニュースが舞い込んだ。


■米IBM、幹部引き抜き問題で米Appleを提訴へ

http://journal.mycom.co.jp/news/2008/11/01/001/index.html

これだけの材料があっただけでも、「Appleがプロセッサの開発に取り組んでいる」と読みたくなる。というよりも、「そう読んでくれ」とでも言われているかのようなタイミングだ。

しかも、取り組んでいるとしたら……P.A. Semiはかつて省電力タイプのPowerPCを開発していたことから、Macでは一度見捨てた「PowerPC」プロセッサということになる。


■P.A.Semi PA6T

http://journal.mycom.co.jp/articles/2005/10/27/fpf1/001.html


Macでは、消費電力とパフォーマンスが両立せず、ノート用のハイパワーで低消費電力プロセッサが得られなかったことからIntelへの移行が行われた。当時、PowerPCはハイパワーで大飯喰らいのモデル(ゲーム機用など)と、ローパワーで低消費電力のモデル(組み込み用など)だけ。ノート用に見合うものではなかった。ただ、ローパワー方面に話を限定すれば、見合う用途もあるかもしれないという話になる。

iPhone/iPod touchのプロセッサは、将来、

(1)ARMから省電力のIntelプロセッサに乗り換え(→ 2009年中も無理?)

(2)ARMのハイパワーなプロセッサにアップグレード(→ 現物がない)

といった道をたどると予想していたわけだが……ここで、

(3)ARMから省電力PowerPCに乗り換え

というパターンも考慮すべき状況になった、というわけだ。

一度見捨てたPowerPCプロセッサを使用するとなったら、どのツラ下げてIBMなりMotorola(Freescale Semiconductor)にお願いできるというのだろう? ……というわけで、自力で作る(設計してよそのメーカーに作ってもらう)可能性というのは、あるのかもしれない。


ただ、省電力PowerPCというものが、

(A1)何のために

(A2)どのぐらいのスペックで

必要になってくるのかという話にもなるだろう。

Macに新開発のPowerPCを使うという話は考えにくい。使うとなれば、

(B1)iPod touch/iPhoneの後継機種

(B2)MacとiPodの中間形態のタブレット機「Mac Pad」


のどちらか。あるいは、

(B3)これ以外の未知の製品

ということもあり得る。車載用コンピュータという可能性だってある。過去にそういう噂もあった。

P.A. SemiのPowerPC互換プロセッサは、現状では「PowerPC 970互換」で「1.5GHz動作時に4W」という低消費電力ではあるものの、モバイル用というほどではない。

このあたりの予想は、かなり参考になった。


・AppleがPower PC互換チップメーカーを買収した本当の意味

http://www.digi-mac.jp/archives/50599394.html


・AppleがPower PC互換チップメーカーを買収した本当の意味

http://www.zubapita.jp/2008/04/25/appleがpower-pc互換チップメーカーを買収した本当の意味/


ただ、サーバー用というのは考えにくい。「ホーム」サーバーだったら可能性もないではないが……ホームサーバーというジャンル自体が成立しにくい。AirMacやTime CapsuleあたりのCPUにPowerPCを……という話もないことはないが、そのへんは基本的にAppleが「こだわっていない」製品ジャンルのようなので、そのへんが高機能になったりコンピュータ的な何かを頑張ってくるようなことはないだろう。

(B1)(B2)あたりの予想は、「こうなったらいいのに」という「願望」を含んだものであるため、予測の精度はいまひとつだ。材料も情報も何もない。当たっている(かもしれない)確率も4割以下だ。

そのあたりは、1月のMacWorldで明かされるかもしれないし、明かされないかもしれない。現時点でもうちょっと踏み込んだ判断をしようにも、いまひとつ情報が少なすぎである。


いろいろ考えてみて、これは「ほかの何かの情報を隠すための煙幕」なのではないかと考えた次第。それが何なのかは分らないが……たとえば、CPUではなくCPUの周辺チップを自社開発(ないしはNVIDIAと共同開発)し、積極的に外販を行うことで、将来的に非純正のPC/AT機にMac OS Xを導入しやすくする「地がため」を狙うとかいった話は面白い。なんにせよ、現時点では判断材料が何もない。

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