地下鉄、「遅れ」のシステム

先日、西武線で人身事故があり、電車が大々的に遅れた。たまたま使っているルートが西武線→有楽町線で、非常にホットな……問題を抱えた路線であることも問題を大きくした。


後日、たまたま体調不良で(寝違えて首をやってしまった)出社が遅れて、昼ごろに小竹向原の駅で新木場行きの電車を待っていたら、御婦人に話しかけられた。見るからに上品なたたずまいではあったが、たいそうご立腹といった風であった。もちろん私に対してではなく、電車の運行に関してだ。お話していただいてよろしいかしら、と断った上で御婦人は語った。


 「いまの新木場行き、乗り継ぎを待つのかと思っていたらさっさと行ってしまって……ひどいですわよね」


 「ええ、私も待ってくれるのかと思っていました」


しばらく、御婦人とお話をして、有楽町線への不満やら、どのホームにどこ行きの電車がくるのかさっぱり不親切な小竹向原駅の状況などを話した。そこで、前々から問題だと思っていたことを口にしてみた。


「副都心線は、普通の地下鉄と運行システムの基本構想が違うんです。南北線で最初に導入された運行システムなんですが……車両の編成を8両と従来の10両編成よりも短くして、そのぶん運行本数を多くするというもので……そのため、駅で待っていても副都心線ばっかりやって来るし、いざ乗ろうとしても副都心線から来た車両は8両と短いので、待っている人はたいへん迷惑しています。


事故時に回復運転を行おうにも、運行ポリシーの違うものを混在させながら走らせるというのは至難のワザで……そういう、根本的なシステムが違うもの同士を乗り入れすると、予想外の結果をもたらすものなんです」


そうよねぇ、なるほどねぇ……と口にしながらも、御婦人はそこまで突っ込んだ議論を望んでいない風であった。


孫が大学に通うのに副都心線ができたら便利かと思っていたが、定期券代が上がって大変だとか……だんだん私が話に飽きてきたころに新木場行きの電車がホームに入ってきた。電車が来るのがあと数分遅かったら、キヨスクにジュースを買いに行くとかなんとか理由をつけて、その場を立ち去る必要があったかもしれない。


鉄道は事故や失敗を積み重ね、その経験を生かして安全な運行を維持していくものだと聞く。たしかにそうなんだけれど、有楽町線のような「東武東上線」「西武線」「有楽町線」「副都心線」の4路線の相互乗り入れを行う難易度の高い路線運行に関しては、十分なシミュレーションを行うべきだろう。いや、行っているのかもしれないが、トラブル時にそれが活かされていないというべきなのだろうか。


少なくとも、運用思想の異なる路線同士の相互乗り入れは、事故発生後の回復運転を行う際には行わないほうがよい、という学習はなされているようだ。ほかにも着手すべき問題点は多いので、これを正すべきだろう。

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