カスタマイズできるキーボード、というのは割と昔からあった。
■ソフトウェアキーボードCE-153(1982年)
いにしえのSHARPのポケットコンピュータPC-1500の周辺機器で、CE-153ソフトウェアキーボードというものがあった。保険外交員やカーディーラーがアタッシュケースに入れて持ち歩き、タッチパネルのように使っていたようだ。
けっこうなお値段だったので、PC-1500ユーザーの自分もCE-153を入手したことはなかったのだが、25年前ぐらいには「カスタマイズできるキーボード」というものは存在し、市販されていたことになる。ほかにも、EPSONのHC-20にも同様の周辺機器が存在していたような記憶がある。
前述のとおり、このCE-153はタッチパネルのように使うことを目的としていた。タッチパネルそのものが安価に入手できるようになって絶滅したタイプの入力機器である。
■Optimus Maximus keyboard(2007年)
キートップひとつひとつが有機ELディスプレイになっており、アプリケーションごとにキートップ表示内容を変更するようなインタフェースを実現できるキーボード。Mac OS X用のソフトウェアも添付されており、Macに標準対応している。
ガジェット好きには割と有名なこの製品も、一般の認知度はさほど高くないだろう。まして、1セット20万円という値段では、コストパフォーマンスが悪すぎる。また、Web上のレポートによれば、打鍵感もよろしくないようだ。それでも、この製品に未来感を感じたユーザーによって多数の購入申し込みがあったようだ。
http://www.artlebedev.com/everything/optimus/
本製品は、「キートップをアプリケーションごとにカスタマイズできるキーボード」であり、先のCE-153とは方向性が異なる。
本製品のコンセプトをより低価格で実現するためには、物理的な動作部分をなくしたタッチパネル式キーボードというものが落としどころになることだろう。ただ、クリック感がまったくなくなるので、そこが問題だ。打鍵時にキーボード全体が沈み込むとか、沈み込まなくても物理的にバイブレータなどで振動を発生させ、フィジカルなフィードバックを発生させることが不可能なわけではない。
■The Ergodex DX1 Input System(2005年)
キートップとベース部分が分離できるタイプのキーボード。25個のキートップがついて149ドル。同時に複数台(上限6台)の接続をサポートし、独自のキーマクロをサポートした上位機種「CH Products Multi Function Panel」(189ドル)も存在している。
http://www.ergodex.com/mainpage.htm
http://www.ergodex.com/faqs/Buyer_Selection_Guide.htm
キートップのカスタマイズはシールなどで行うようだ。Optimus Maximusのように有機ELディスプレイを組み込むと値段がハネ上がるが、シールや紙で行うのであれば低コストで済む。
キートップ・ユニットはキー1つ1つを自由にレイアウトでき、ベースユニット上にただ置くだけで動作するようだ。動作中に場所を変えることも可能、とメーカーのWebサイトに明記されている。
さらに、キーボードとして見ても……しっかりとストロークがあるようで、Otimus Maximusよりは遥かに良好だろう(たぶん)。本製品は、入力インタフェースを使いやすくカスタマイズすることを目的としており、コンセプトはCE-153やOptimus Maximusとは異なる。
アプリケーションごとにキートップを交換することも、透明トレイの上にキートップを載せたセットを複数用意しておいて交換することで実現できるようだ。とくに明言されていないが、キートップは同時に載せておける数が25個までなんだろう、と(勝手に)推測している。
……と、ここまで書いておいてナニだが、108とか101個の全キートップを載せて使うというよりは、ゲーム操作などに必要な最低限のキートップのみ載せて使うものらしい。キーボードの代替インタフェースではなく、補助インタフェースという位置づけのようだ。
そのうえ、Windows用のソフトウェアしか添付されていない。それでもオープンソースのドライバが開発されているようで、海外のMac系の開発者が興味を持っているようだ。そのうち、対応ドライバが発表されるかもしれない。
http://ergodex.hydraproductions.com/wiki/