紙コンピュータ

ユーザーインタフェースとして「紙」を使うコンピューティングスタイルがある。紙に印刷されたバーコードをリーダーで読み取って処理を行うようなスタイルだ。名付けて「紙コンピュータ」。

この分野では、携帯電話に搭載されたカメラを利用したQRコードが圧倒的に有名だ。ただ、印刷面積がある程度必要になるのと、QRコードを印刷物に入れるとそれ自体の存在感が強すぎるため、1ページ中に大量に入れておくわけにもいかない。

そうした問題を解決すべく登場したのが、分散して情報を配置する方法である。紙の上に極小のドットを印刷しておき、そのドットの並びによって位置はおろかどのページのどの媒体の情報かを検出できる。有名なところではアノトのアノトペンがある。最近、アノトからライセンスを受けた製品やサービスが登場している。


また、グリッドマーク社のGrid Onputでは、カーボンのドットを紙全体に分散配置するという、アノト方式ときわめて近いソリューションを提供している。アノトペンではペン側で画像処理を行うようになっているが、グリッドマーク方式ではリーダー側は簡素なものにしてPC側で画像処理を行うところに違いがあるようだ。アノトペンは3万円ぐらいするが、グリッドマークのリーダーは10,000円ぐらいで入手可能(1個のみ買うとそのぐらいという話、売ってくれれば)。子供向けのカードゲーム機のリーダーとして使われている例もあるようだ。

印刷された画像の中に情報を紛れ込ませておくという方式もある。ステガノグラフィー(情報を隠蔽しつつ埋め込む技術)を利用した方法であり、数年前に富士通から発表されたものでは画像のY版(イエロー)に情報のパターンを埋め込んでいるという話である。


ただ、それぞれに向き・不向きがあり……どれが圧倒的に優れた技術だと言い切ることは難しい。

手軽さとコストパフォーマンスならバーコードだろう。リーダーの単価についても、市価で5,000円ぐらいからUSB接続タイプのものが入手可能だ。ただし、読み取りにはバーコードリーダーが必要になるので、誰にでも使えるというものでもない。CCDカメラから読み取って認識する、バーコードリーダーを必要としないタイプのソフトも存在するが、認識精度と手間が専用リーダーに比べると格段に落ちる。

携帯電話向けソリューションなら圧倒的にQRコードだ。QRコードパターンの作成は簡単に行える。ただ……携帯電話以外で使おうとするとかなり辛い。専用のPC用QRコードリーダーは15万円ぐらいする。

ステガノグラフィー系とか分散ドット方式になると……今度はライセンスの問題が発生する。特定の座標を特定の用途に使用しようとすると、その座標に対して対価を支払う必要が発生する。気軽にコストをかけずに社内向けシステムに使うわけにも行かないだろう。

先行の技術や製品が抱えている「何か」の問題点を解決するために後発の技術が生まれてきているわけだが、従来の問題点については解決しつつも、別の問題を新たに抱えているというのは非常に興味深い事実である。

将来的には、フルカラー対応の電子ペーパーを表示デバイスとして用いる超薄型のPaper Computerが登場し、紙=Computerという状況になるまで、この戦いは続くのだろうか。

Copyright By Piyomaru Software. All Rights Reserved