ソフトウェアベースのDSP「Hear」

昔、Quadra 840AVというMacがあった。68040/40MHzという、モトローラ68系CPU最高速度にして最高峰のマシンだった。出荷直後はシステムが落ち着いておらず不具合てんこもりで、高価なのに使いものにならないという、とんだ「鬼っ子」マシンとして世を騒がせた。さすがに、半年後ぐらいには不具合も修正され、販売時期の最後のほうは割と枯れてよい感じのマシンになったと記憶している。発売直後に買った人に言わせれば「とんだじゃじゃ馬」だが、最後の方に買った人にとっては「超お買い得マシン」だったろう。初期は70万円ぐらいしたが、最後の方では20万円ぐらいで投げ売りされていた。


Quadra 840AVの投げ売りの話ではなかった。このマシンに搭載された新機軸について触れておかなければならない。


このQuadra 840AVにはDSPチップ(AT&T製3210。50MHz駆動)が搭載されており、システムのサウンドにエフェクトをかけることができた。内蔵のCDドライブで再生した音楽に簡易サラウンド効果を与えられたりと、なんて贅沢な機能なんだろうかとしばらく夢中になって遊びまくっていたが、後継機種のPowerMacintosh 8100/80AVではこの機能が省略されて、ガッカリした記憶がある。840AVから8100/80AVへの「アップグレード」サービスに出したら、あの愛すべきDSP機能が削除されて返ってきてしまったため、その落胆の度合いはひとしおであった。


かくして、一度サウンドエフェクトを味わってしまったが運のつき、その後にサラウンド機能つきのAVアンプを購入し、部屋にやたらとスピーカーを配置してMacからの音声出力をいろいろいじくっていた。まあ、独身時代だからできたことであって……現在は実にさっぱりしたものである(泣)。


子供の頃にはラジカセ2台を左右に1台ずつ並べて同じ曲のテープを再生し、ラジカセの「個体差」から生じる再生速度のズレを利用して疑似サラウンドをエンジョイしていた。その原体験からか、やたらと広いホールの残響音を設定して音を鳴らして遊ぶような、(元)サラウンド馬鹿の自分にとって、先日発売された「Hear」というMac OS X用アプリケーションは、ソフトウェアベースでサラウンド機能を実現するものであって、猫まっしぐらにお試し版をダウンロードしたことは言うまでもない。


http://www.igeekinc.com/products/hear.html 


試してみた。


……………ハードウェアベースの製品ほどよいとは思ってはいなかったのだが、音が割れる(汗) これはかなり辛い…………。理由はすぐに判明した。ウチのMacではLaCieのFireWireスピーカーをつなげて、96KHzのオーバーサンプリング再生を行っていたからだ。そこまで処理能力は追いついていないのだろうと理解し、出力を44KHzに戻してみた。


おお、44KHz再生ならばっちりだ!!! ぷちぷちと雑音が入ったりすることもない。ただ、将来のハイパワーなCPUでは96KHzオーバーサンプリング再生にも対応していただきたいような気もする。これはHearのせいではないが、割とドンシャリ(低音部と高音部を無理矢理強調する)の設定が用意されているので、たびたびLaCieのFireWireスピーカーで音が割れることがあった。FireWireスピーカーではそれほど(過度の)重低音は出せない。


いろいろとプリセットのサウンド設定を試してみて、「明らかにこの設定はいらない」というものもあったのだが、なかなかいい感じだ。途中で飽きてしまうかもしれないが、これで3,500円ぐらいというのだから、買って損はないだろう。とりあえずお試し版をダウンロードしてみて試すだけの価値はある。


ただ……プリセットの設定をベースにしていろいろいじくれるようなのだが、ちょっと設定をいじくるとすぐに破綻する。プリセットの中から選んで楽しむといったものなのだろう。


あと、AppleScriptに対応していない。対応する必要があるの? と、指摘されそうだが……このソフトはAppleScriptに対応すべきだ。

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