AppleによるPA Semiの買収は何を意味するのか?

その筋のニュースで伝えられているとおり、AppleによるPA Semiの買収は久しぶりに目立つ動きだ。だが、この買収の目的が何であるかを見定めるのには手間暇がかかりそうだ。情報が足らないうえに、分析するのが難しい。


まず、PA Semiとはどんな会社か?


「PA SemiはAlphaやStrongARMの設計などで知られるDan Dobberpuhl氏が率いるファブレスのプロセッサメーカー。主に低消費電力プロセッサの設計を強みとしており、PWRficientなどの製品がある。」(mycom)


「Appleでは同社の技術をiPhoneやiPodなどの携帯機器に応用するものとみられる。」(mycom)


「Appleが低消費電力を強みとするプロセッサメーカーを買収したことで、今後同社は携帯機器などの低消費電力を求められる分野ではIntelのAtomではなく、PA Semiの製品を選択する可能性が強まったといえるだろう。」(mycom)


「米Appleが省電力マイクロチップ設計会社P.A. Semiを買収する。iPhone、iPod、Macの主要部品のカスタマイズ強化につながるかもしれない。」(ロイター発 ITMedia)


まずは、PA Semiに対する評価が分かれている。この最初の設定次第で結論へとつながる道がガラリと変わってしまう。


 (A)PA Semiは低消費電力プロセッサの設計に強みを持っている(モバイル前提)

 (B)PA Semiは低消費電力だがハイパワーなプロセッサの設計に強みを持っている(ハイパフォーマンス前提)


(A)を前提として考えると、「携帯機器のプロセッサにIntelのAtomではなく、PA Semiの製品を選択」という結論につながる。(B)を前提とすると、「iPhone、iPod、Macの主要部品のカスタマイズ強化につながる」という話になる。


否定できるものはどちらだろう? まず、(A)はそうかもしれないし、否定もしづらい。(B)については、Appleがハイパワーなプロセッサ製造に進出する必要性自体がない。かといって、(A)が正しいともいいがたい。このあたりで、目的が見えづらい。


さらに、PA Semiの買収によって得られるものが何ととらえるかによっても、話の流れが変わってしまう。


(C)PA Semiを買収すると、低消費電力設計が得意なプロセッサメーカーが手に入る

(D)PA Semiを買収すると、有能な設計エンジニアが手に入る


といった話が入り乱れている。不思議とここで、


(E)PA Semiを買収すると、同社が保有する知的財産権が手に入る


という話が出てこない。まあ、見せられたり話を聞いたりしただけで買収したくなるような発明品というものがあるのかはまったく分らない。


なんだ、分らないことだらけじゃないか(ーー;;;


自分としては、


「Strong ARMとAtomの消費電力のレベルは段違いであり、Strong ARMのほうにまだ随分と分がある。AtomはiPodやiPhoneにはまだまだ利用できない段階だ。今年中はとても無理だし、来年も微妙。Appleは、iPhone/iPod touchのCPUにIntel Architectureの製品を採用するつもりであった。だが、当初聞かされていたよりも消費電力削減は進んでおらず、ARM系のCPUを延命させる必要が生じた。」


という説を支持したいが、


「デスクトップやノート型Macの電力効率向上のために、あるいは新しいジャンルの製品設計のためにPA Semiを買収した」


という話も間違ってはいないだろう。このあたり、多くの人と意見交換を行っておきたいところではある。

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