コミュニティまで作って、HDRについてひっじょーに活発な議論を行っている昨今である。
同コミュニティでは、HDR画像なんて自動でポンポン撮影して、1分間に1枚撮影したHDRから高速ムービー(Time-lapse Movie)を自動生成してやろうじゃないの、というのがその主旨である。
ただ、表現手法としてのHDRには去年あたりから気付いていたものの、手元にHDR撮影に足り得るカメラがあるわけでもなく、しばらくの間は「HDR耳年増」のような状況になっていた。見るだけでやっていなかったのだ。
しかし、このHDRの技術を高速ムービーの世界に持ち込むとなかなか面白いことが起こるかもしれない……と、そう考えていろいろ本格的に調べはじめた。
露出を変更しながら複数枚の写真を撮影する技術、それを可能にするソフトウェア、コンピュータへ自動転送する仕組み…………まあ、そのあたりまでは屈強のマニアがよってたかってリサーチを進めてきた。
だが、予想外の敵が立ちふさがってきた。敵の名を「トーン・マッピング」という。
トーン・マッピングについても、以前は「ああ、そんな名前のお菓子があったね」ぐらいの認識であったのだが、その本質を理解した瞬間、ちょっとしためまいがした。
トーン・マッピングとは、本質的にはHDRの32ビットの色表現を、一般的なアプリケーションが行える8ビットの色表現の中に落とし込んでやる作業のことであり、この作業を行うさいにどのようなトーンカーブを採用して……つまり、どのあたりの色の情報に着目して8ビットに落とすかを選ぶという作業である。
このトーンマッピングいかんでは、最終的なアウトプットがまるで別物といってよいほどに変わってしまう。そーゆーものなのだ(実物を見てはじめて理解できた)。
Photoshopは内部で32ビットの色を扱えるようだが、JPEGとして書き出すとしたら8ビットに落とし込んでやらなくてはならない。
その時はちょっとくじけかけた。これは、人の目で選択して行わなければならないだろう……自動で行うなんてちょっと無理なんじゃないだろうか、とそう考えた。
しかし、それは本当か? 何か見落としている点はないか? 常識という名の鎖で発想の可能性を閉ざしていたりはしないか?
…………ああ、なるほど。本来このトーンマッピングなんて作業は必要ないんだ、と気付いた。
アプリケーション側がきちんと32ビット以上の色を扱えるようになっていれば、わざわざ8ビットに落とし込む必要などないのだ。
アプリケーション……さらにいえば、画像を扱うためのOS側のサービスそのもの……Mac OS XでいえばQuickTimeだ。
QuickTimeが各チャンネルあたり32ビットの色表現に対応していて、QuickTime Playerがそれに対応していさえすれば、HDRの画像から直接QuickTimeムービーを生成することが可能になる。
QuickTimeの32ビット対応がどの程度進んでいるのか、行われていないのか、それともすでに済んでいるのか……そのあたりをリサーチしておくとよいだろう。
後日談:やはり、現状ではQuickTimeは32ビット色情報には対応しておらず、これからの対応が待たれる…………。