「知」のグリッドコンピューテイング

(元題:MacResearchがOpenMacGridをリリース)


インターネット上の開発者/研究者のコミュニティーである「MacResearch」は、AppleのXgridテクノロジーを基盤とした「OpenMacGrid」をリリースした。


Mac OS X 10.4以上のOSをインストールしたマシンであれば、CPUの空き時間を利用してインターネット経由でグリッドコンピューティングのノードとして参加することができるのだという。

ちょうど、SETI@homeと同じようなものだ。SETI@homeでは地球上で受信した電波の中に地球外の知的生命体から発信されたものがないかを、インターネットに接続されたコンピュータの空き時間を利用して世界中で手分けをして調査していた。

■地球外生命体を探索するSETI@homeが正式に終了

SETI@homeは、自分のマシンのパワーを誇示したいパワー狂のコンピューターユーザーの格好のオモチャになったばかりでなく、分散して計算を行う「グリッドコンピューティング」の有効性を世に広く示したものといえる。

SETI@homeでは、集約された膨大なコンピューティングパワーは地球外知的生命体からの通信を検知する、という(崇高な)目的のためにしか動作しなかった。OpenMacGridは、これを汎用的な計算目的に利用できるようにしたものだ。

OpenMacGridがどの程度広まって(認知されて)いくかは未知数である。最初は、大学や研究施設のコンピュータ同士で計算時間を融通し合ったり、大学の計算機センターが授業用のコンピュータからCPUパワーをかき集めて利用するといった利用形態が主なものになるだろう。とりあえず、現段階では一般ユーザーがこの用途もよく分からないグリッドコンピューティングに気前よく参加してくれるとは思えないので、そうした地場固めからやっていくほかないだろう。

そのうえで、「これだけの成果を出した」という結果をひっさげて世間一般のユーザーの参加を促す、といった次の段階に(運がよければ)移行することになるかもしれない。

もし、ブレークスルーがあるとすれば、一般のユーザーが行っているようなコンピューティングでもそのパワーを利用できるようになった場合である。そうなれば、皆すすんでCPUの余剰時間を提供し……自分が困っている時にはCPUパワーを利用するようなスタイルが定着する(かもしれない)。

自分が問題にしたいのは、現時点でのグリッドコンピューティングが「単なる力」を集結させる、ひどく頭の悪いシステムに過ぎない点である。エジプトのピラミッド建設にも似た労働力集約を効率よくおこなっているに過ぎない。

たとえば、ユーザーがある問題に直面したときに、○○というツールを××のように用いたとか、△△というニーズを満たすために●●という製品を用いたといったユーザーの知恵や経験といったものを集約できないものか?

そうした「知」のグリッドコンピューティングが実現できるなら、喜んでマシンの空き時間を提供したいような気がするのだが。

Copyright By Piyomaru Software. All Rights Reserved