TVCF調査

引っ越しの最中、外で荷物を待ちながらぼーーっと立っていると、某TV視聴率調査の会社の調査員が声をかけてきた。この地区での30代の男性のサンプルが取れていないので、調査に協力してほしいのだという。その場で快諾。

奥方様が「このヒネクレ者がなんでこんなめんどくさいことを嬉々としてやりたがるのか?」と、疑惑の目で私を見つめる。理由を口頭で説明することは困難であるが、簡単にいえばこんな感じだ。

この手の調査は世間で思われているほどサンプル数が多くない。せいぜい全国で300世帯程度といわれている。その中の1データというのは、割と比重が大きいのである。

そこに、このひねくれ者の意見を反映させられるとしたら、自分の意見を社会に反映させる手段としては、下手をすれば選挙に行くよりも効率のよい行為なのだ。
調査自体はTVCFについての好感度および購買意欲調査というものだったのだが、下手に知っているTVCFが多く、回答にはかなりの手間がかかった。移動のバスの中で書き、電車の中で書き、外で食事をしては書いた。お礼の1000円の商品券以上の仕事をしたに違いない、とひとり満足している。

TVCF(CM)調査票を記入して認識を新たにしたのは、CMの完成度と製品の購入意欲の間に相関はまったくないということだ。いい映像やアイデアを凝らしたCMだからといって、製品の内容や特徴が分かるわけではない。まして、CM程度の内容で何も考えずに購入行動を起こすわけがないのである。

CMという「刺身のツマ」「番組と番組の間の埋め草」に対し、それを「好き」とか「よくできている」と思ったとしても、その程度で購買意欲を刺激されたりすることはない。

もしも、15秒や30秒そこそこのイメージ映像を見せられただけで強烈な購買意欲が湧くというのであれば、それはおおよそ人間などではない。単なるロボットか条件反射でヨダレが出る犬である。前頭葉を除去されたとか、洗脳されまくって骨の髄まで情報操作されている「ヒトとは別の生き物」あるいは、完全なお子様だ。

CMを見せられたところで、それが直接の購買行為につながることなど「まれ」である。あえていおう、「絶対にない」と。逆に、それだけの広告費をかけないと売れない製品なのかと勘ぐってしまう(化粧品とか)。

単なるイメージや印象だけで売り込むのではなく、もっと機能や価値の本質にアクセスできないと購買意欲なぞ出てこないのである。そこんとこ、よ〜っく視聴率調査に反映させやがれというところなのだが……。

まあ、調査とか統計とかというのは、よほどのことがないかぎり、単に「クライアントの意向に合うような結果」を出すための行為である。調査を行うほうも「どうもこの調査結果はノイズっぽいぞ」と判断して切り捨てるにちがいない。

そして、その結果としてどんどん現実と数字が乖離していくのだ。

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