奥方様と一緒に、光が丘のショッピングセンターに炊飯機を買いに行った。
気合いの入った電器屋さんというわけでもなく、価格のお安い家電量販店というわけでもなく、ただショッピングセンターの中にある店ということで、別段期待して行ったわけでもない。
ただ、奥方様が理由も告げずに「ヒカリガオカに行くのだぞよ」といわれたので、一緒に自転車でついていったのだ。
そこで、店員に「炊飯器を見せてくれ」というと、ひじょ〜に若い女性の店員が出てきた。そこらへんをプラプラ歩いてるねーちゃんと何ら変わらない風体である。奥方様と私は顔を見合わせた。奥にいたベテランっぽい男性店員に声をかけたのだが、その店員が彼女に「行け」と指示したことに疑問を持ったためだ。
そんな店員に説明させるのかよー、やる気あんのかよ〜? と思いつつ、仕方なく女性店員に、
「私たちとしては、このお安い炊飯器でいいと思っているのだが、3万円前後のお高い炊飯器とどこが違うのか? 機能面でどのような相違点があるのか説明してほしい」
と、お話をしてみた。
女性店員は、「なるほど、そういうことですか」と言うやいなや、炊飯器市場の技術トレンドと価格帯による機能の差について理路整然かつ非常に分かりやすく説明してくれた。
炊飯器の技術トレンドはIH炊飯(カマの一点を加熱するのではなく、全体をムラなく加熱する調理方式)と、そのIH炊飯を実現するためのカマの素材選定というところにあるのだという。テフロン加工は当然として、その中の地金の部分に熱伝導率のよい銅を利用しているメーカー、保温性を重視(=保温時の電気代をセーブ)するメーカー、多層構造の素材を採用しているメーカーなどさまざまだ。
さらに、IH炊飯での機能競争はすでにホットな話題ではなく、そこに圧力を加えておいしいご飯を炊き上げるというのが最新鋭の炊飯器がしのぎを削るポイントなのだという。
IH+圧力+カマの素材、という価値軸で判断を行っていくと、たしかにお安い価格帯のものはそれなりで、1ランク上の価格帯の製品にはそれなりの根拠があった。
さらに、お安い価格帯のものは昔ながらの白っぽい筐体デザインであったが、現在のデザインの主流は金属的なメカっぽい高級感あふれるテイストに変わっており、その点でも1ランク上の価格帯の製品に分があった。
かくして、私と奥方様はその女性店員の知識量と、実際に自分も買って使っているという話に圧倒され、最初に選んだお安い価格の炊飯器ではなく、もう1つ上のランクの炊飯器を購入したのだった。
ただ、最新鋭の炊飯器はカマが分厚いため、超弩級の重量を誇っており、自転車の買い物カゴに乗せると非常に装甲が……いや、走行が困難になるのであった。
しかし、その搬送の困難さも炊きあがったご飯のおいしさで報われた。太ってしまいそうな気配である。いや、この引っ越しの最中ずっと肉体労働に従事していたにもかかわらず、すでに太ってしまっているのである。うむっ!!