極悪NTT東日本との攻防

実家に待望のFTTH回線が来た。NTT東のFlets光・ハイパーファミリーというコースなのだそうな。まさか、そんなのどかな名前がやがて切られる火ぶたの原因になるとは、誰が予想できただろうか?
実家到着後、両親へのあいさつもそこそこに、すぐさま実家のMacをネットワークに接続する作業にとりかかった。NTTから送られてきた資料を確認。さんざん苦労して、NTTやプロバイダに電話をかけ、ルーターなどのLEDの状態を何回も答え、実家の電話番号を唱え……イライラも最高潮に達していた。実家の契約プロバイダであるSo-netの窓口でいいかげんな話をされ、すぐに完了する作業のはずがよけいな回り道を強いられた。

それでも、なんとかネットワークの接続を確認でき、Webで外が見られるようになり、メールの送受信が確認でき、自宅で待機していたiChatオートレスポンダに接続してビデオチャットが行えることも検証できた。客観的に見て「つながった」といってよいレベルだと判断した。

実家はこれまでアナログモデムのダイヤルアップ接続環境であったため、自宅でダウンロードしてはアーカイブを持ってきて行っていたOSのアップデート作業に着手。

対象は、Mac OS X 10.3.xの動いているeMacと、Mac OS 9.2の動いている初代iBookの2台である。

ところが、これがうまく行かない。しばらく放置状態でアップデートさせ、マシンの前に戻ってきて驚いた。ソフトウェアアップデートのリストの半分ぐらいに「×」マークが表示され「タイムアウトでダウンロードできなかった」といわれてしまう。

たかだか、OS標準機能によるアップデータのダウンロードでコケるのだ。OSのアップデータを落とすのに失敗した経験など皆無だったので、これにはおおいに疑問を抱いた。

マシンをルーターの横に持って行って、つぶさに様子を観察することにした。
10Mバイト程度のファイルのダウンロードを行うだけでWANとの接続が切断され、ひどいことに光ファイバーを経由して行っている音声通話〜NTTが光電話と銘打っているものだが〜まで通話が切断されてしまうことが判明した。あいにく、ルーターのファームウェアは最新版であり、自助努力では状況の改善を見られそうにない。

ADSL回線で同様の症状を見たことはある。たしかに、無理矢理なテクノロジーであるADSLにおいては、まあそんなことがあっても仕方ないかな、というあきらめはある。

ところが、ADSL以外でも……たとえばVDSL回線を使用している友人がいるのだが、通話のせいでインターネット接続が切断されたり、その逆もまた発生しており、とくに電話はまともに使えたものではないのだという。

まさか同様の現象がFTTHのサービスでも起こるとは、思ってもみなかった。「光電話+インターネット」とTVCFをあれほど大々的に打っているNTTのサービスでもこの有様だとは!

文句を言うべきだ。いや、文句を言わなくてはならないと判断した。

すぐさま、NTT東の「故障」窓口に電話し、経緯を説明した。ふたたびお約束の機器状態の確認、通り一遍の症状の説明を行わされ、「回線の状況を調べる」ということになった。

折り返しでかかってきた電話では、「回線に問題はない」という話であった。しかし、実際に回線の切断が起きているのだ。

「実際に通信機器の確認を行わせてほしい」という至極まっとうな話になったのだが、ここでトンでもない話が出てきた。

「もしも、当社の機器が原因で障害が起こったのでなければ、出張費用4,750円をいただきます」

明らかに、ルーターなどNTT東が送ってきた機器に由来するトラブルである。それをどのように顧客のせいにするというのだろうか?

「ほう、それはどのように判断するんだね?」
「わたくしどもの用意した機械で通信の確認を行います」
「OSは?」
「Windowsです」
「同じ環境を用意しなければ意味がないと思うが、どうか?」
「Macはご用意しておりませんので……お客様のマシンが正常に動作しているかどうかチェックを行います」
「お前、バカか?! その判断は誰が、どのように、どういった基準で行うんだい? 基準も示さずにおかしいだの動いていないだのというのはおかしいんじゃないか?」
「…………」
「請求金額が多いの少ないのという問題ではない。お前の話があいまいな上に基準がいいかげんで、到底納得できないといってるんだ!!」

(上役に交代してラウンド2)

……最初に出てきた下っ端構成員(学生のアルバイトかというレベル)よりは話の分かりそうな上役が出てきたが、それでも頑として先方の姿勢は崩しそうもない。

「ああ、わかったわかった。話をする相手を間違えていたよ。消費者相談窓口にNTT東日本の劣悪なサービスとその現状を詳細に報告させていただく。それでよろしいな?」

伝家の宝刀も、抜かなければただのお題目である。ただ、伝家の宝刀であるがゆえに実際に戦いで使用されることも少ないのであるが…………

結局、向こうが折れて出張費用は請求しないということになった。当たり前の話であるが、1時間以上NTT東とやりあって、電話口で怒鳴りまくり、テーブルを叩きまくった末に見た決着であった。

向こうとしては、高飛車な姿勢で客からの電話を突き返し、サービスに問題があっても自分たちのせいにしないというのが基本姿勢である。これは、NTTにかぎらず昔戦った中野のCATV業者も同様でまったく変わらない。

「通信回線業者に知性があると思ってはいけない」
「通信回線業者にまともなロジックは通じない」
「通信回線業者を人間と思ってはいけない」

こうでも考えないと、納得できないおかしな話が山盛りである。

通じるのは、「責任逃れを行うことで発生するさらに大きな問題」を相手に認識させることのみ、である。あとは、こちらのロジックが正しいという一点で突っぱねるしかない。さらに、ロジックに加えて「怒り」という感情をぶつけなければ正面突破は難しい。

向こうは単に用意されたマニュアルに基づいて対応しているだけの「マシーン」である。マニュアルに誤りがあっても、それをマシーンが認めることはない。誤りを認めることはマニュアルに記載されていないからだ。

左脳的エンジニアリングの末に生み出された悪のロボット軍団を打ち破るのに必要なのは、純粋な「怒りという感情」だというのは、なんとも皮肉な話である。

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