「こうなるはず」だった話

2000年だか2001年だか忘れたが、AppleのAppleScript製品担当のSal SoghoianがMacWorld Expo/Tokyoに合わせて来日した折、AppleScript筋の人間が初台に呼ばれて、Mac OS X上のAppleScriptについてのブリーフィングが行われた。

当時、Mac OS 9上のAppleScriptは世紀末的な問題点を多数抱えていた。マルチタスク性能の低さにより複数のアプリケーションを同時に並行して動作させたときに極端にパフォーマンスが落ちる問題、増えすぎたOSAX(命令語を増やす機能拡張)によってAppleEventのコンフリクトが生じてしまっている問題、そもそもOSがクラッシュする可能性を考慮しながらソリューションを設計しなければならない問題……などなど。

まだお披露目することすら禁じられていたMac OS Xのβがその場で紹介され、AppleScriptが動作することが示された。

当時すでにNewt Onの具体的な姿についても構想をめぐらせていたので、それについて意見を求めたりもしたのだが、Appleとしてはそういうレベルには達していないという話であった(AppleScriptの自動生成については研究しているとか、OS Xのあらゆる部分にAppleScriptをReachableにしたいという話はしていた。これは後日UI Element Scriptingという形でMac OS Xに実装されている)。

日頃不思議に思っていた不条理な出来事の数々を直接Sal Soghoianに山のようにぶつけ、満足な回答が得られたものもあれば、不満な内容だったものもある。

とくに、「こうなるはず」だったのに、そうならなかった話というのは印象深い。

AppleEventは4文字の識別子で識別されているが、これをMac OS Xでは拡張するという話だった。しかし、実際にはMac OS Xのアプリケーションの世界自体がゼロリセットした状態から始まったので、この問題は片付けずに先送りされた。

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