Mike Metasのアイコン作成「文法」を解析する

若干18歳のグラフィックデザイナーMike Metas。彼の作ったアイコンは、センスが飛び抜けて素晴らしく、時に感動的ですらある。掛け値なしに彼の作品は世界のトップレベルに達している。

冷静にMike Metas氏の技量を評価、分析してみると……

「その作業を行う人が持っているはずの小道具、しかしそれは実社会に存在しないような驚きを伴っている」


「平面的でなく立体的であり、陰影の差が大きいために明確な質感と存在感を感じる」


「作成したモデルをありとあらゆる角度から眺めて吟味した形跡がうかがわれる。単に3Dモデルを作っただけでなく、そこに完成度の高い感性が存在していることがうかがわれる」


「活動的であると同時に安定感と静けさをともなった、一種独特の存在感。例えて言うなら、摘みたての、水滴がしたたっているトマトを真っ白いテーブルの上に置いた直後のような存在感。トマトが動き出すことはないが、生き生きとした様子は見るものに確実に伝わってくる」


紙袋にボール(インターネットの暗喩)が入っているアイコンでは、紙のしわ、ボールによるふくらみなどが表現されていた。iPodが大量にバケツに入っているアイコンでは、あまりに整然とiPodが並んでいるため、本当にそんなバケツが存在するのかもしれない、と錯覚させられそうになる。


Mike Metas的な方法論の一応の分析ができた。分析だけでは実際にその方法論を異なるテーマに適用することはできない。分析が正しいかどうか、例題を設定して検証を行う必要がある。


例題:「れいんぼお」

現在、PowerBook/iBook液晶背面のAppleロゴを6色化するアプリケーション「れいんぼお」は、素材集から虹の写真を取り出して、虹の部分のみ取り出している。これに、Mike Metas的な方法論を適用してみよう。アプリケーションは何らかの現象や動作を起こすものであって、モノそのものではない。にもかかわらず、その結果がモノとして存在するシチュエーションを検討してみるのだ。


(1)結果からのアプローチ

Appleロゴがを6色にした結果として何が発生するか。それが、モノとしてどのように存在するか。まずは、Appleの本社ビルのAppleロゴが6色に戻る、戻ってしまったその光景。アップルの社員の名刺がいきなり6色林檎マークになっている、その名刺。PowerBookのAppleロゴが6色になっている様子……などなど。しかし、名刺以外はあまり「モノ」としての面白さに欠けるようだ。


(2)それを行うために必要な道具

6色のペンキの缶が並んでいる、というのはいいかもしれない。色を6色に塗ったので、ペンキの缶が無造作に転がっているという状況だ。

色鉛筆やスプレー缶、マジックなどが転がっているというのでもよいだろう。普通のアプリケーションのようなフリをして、大学ノートの上に6色の色鉛筆が転がっている……かなりいい感じだが、大学ノートの表紙に何が書いてあるかで面白さが決まることだろう。


そういう方向から行くと、Appleの名刺に色鉛筆で無理矢理色を塗った、という案もありえそうだ。そして、それが誰の名刺なのかということも……


例題:高速富士山

ライブカメラを自動巡回して高速ムービーを自動生成するアプリケーション「高速富士山」。これについても、Mike Metas的アプローチを適用してみる。

(1)結果からのアプローチ

ムービーでHDDがあふれかえるので、QuickTimeムービーでHDDが破裂しそうになっている、というのもあるかもしれない。HDDのテクスチャを貼った紙袋に、富士山のムービー(ポスター?)がたくさん詰まっている様子、というのでもいいかもしれない。ムービーが高速なので、それをつないでおくのが大変……という話もあるかもしれない。クマを捕まえる罠にQuickTimeムービーがつかまっている、とか。モノということでいえば、高速道路を示す標識に「高速富士山」と書いてあるとか。


(2)それを行うために必要な道具

定期的に行うのでストップウォッチやクッキングタイマーは必要だろう。ストップウォッチの12時のところにQuickTimeマークが書いてあったら面白いかもしれない。実際に撮影するとしたら、カメラは必要になるだろう。そのレンズには富士山が映り込んでいる。実際に各地のライブカメラを1分ごとに撮影して回るとなったら、ロケットエンジンでも必要になるだろう。各地を撮影して回るために背負うロケットブースターを「道具」として描く。4方を同時に見ることのできる双眼鏡、というのもいいかもしれない。同時に幾つも監視できますよ、というわけだ。


明らかに、最初に作った時とは違うアプローチが見えてきた。あとは、3Dソフトの使い方を覚えて、思い通りのモノが作れるようになるだけだ(涙)。

Copyright By Piyomaru Software. All Rights Reserved