高速富士山のムービーを毎日見ているので、ふとした出先の風景を見たときに「この風景を1日中撮ってたら面白い高速ムービーになるにちがいない」と思う瞬間がある。
ご存じのない方のために説明しておくと、「高速富士山」というのは、インターネット上に公開されている富士山のライブカメラ画像を1分間に一度取得して、日没後に実時間の1000倍程度の高速映像に作り替えてしまうシステム、およびその高速ムービーのことを指す。
そして思うのだ。
一瞬の空間を切り出して形にする写真家という人種がいるならば、風景の一日の変化を空間ごと形にする「高速写真家」、いや、「高速ムービー家」という存在があってもよいのではないか?
それが成立し得るかどうか、市場の有無や規模については考慮しないとして、こなすべき実作業をシミュレーションしてみた。
まず、日本全国の風景を見て回るための足が必要になる。車かバイクの免許がないとダメだろう。あいにく私は車の免許を持っていないので、教習所に通うところから始まることになる。なんて地道なんだろう(汗)
足がそろって、日本全国を見て回れるようになったとしよう。
ただ、むやみにウロつき回っても意味がない。事前に数値地図などを元にシミュレーションを行う必要がある。場合によっては気象シミュレーションなどが行えるとよいかもしれない。このために、自宅にXserveをラックに数台突っ込んで演算を行う必要が出てくる。
シミュレーションの末に、気象の変化が大きいと判断された場所をリストアップし、車に撮影機材を載せていざ出発である。
ちょっと待て。撮影機材というのはどの程度の量になるのだ?
まずは、1日バッテリーが持つDVカメラを数台、三脚も同じ台数が必要だ。さらに雨に濡れないようにマリンパックを付けて揃える必要があるだろう。事前のロケハンで3日程度、撮影に3日程度が必要となることが予想されるため、1週間前後の遠征準備も必要になる。
DVカメラからFireWireケーブルを車内に引き込み、コンピュータで1分ごとに静止画像を取り込む。少なくとも、ありったけの容量のHDDを内蔵したPowerBookが1台、スペアを含めて2台必要になる。
この時点でオートバイでは不可能だ。バンかキャンピングカーに近い装備が必要だ。バッテリーも相当の量が必要になる。屋台で使うような発電機もいるかもしれない。
……なんか、めちゃくちゃ重装備なんスけど(汗)
自分で見て回るのは効率が悪そうだ。日本全国から、面白そうな風景の様子を送ってもらって、そこからチョイスした方が効率が良さそうだ。そのために、「自宅の窓からの映像」コンテストなどを開催。
「初心者でもできる簡単なお仕事です」
「主婦でも自宅でお仕事できます」
といった甘い言葉で主婦の内職を募り、毎日高速ムービーを作っては送らせるのだ。ムービーが一定のクオリティを下回った場合には契約打ち切りにするといった方策も必要となるだろう。
しかし、こんなことをすると……内職を行う側は必死であるし、「ヤラセ」が生じる可能性が高くなる。ウソの映像を送られてとんでもない目に遭いそうな気が……(汗)
実は、これに近い経験をしたことがある。
昔、ニュース記事の要約という仕事をそういう組織(主婦に内職仕事を割り振ってこなす)にやらせてみたことがある。いくつかの個人や団体にテスト用の文章を送ってやらせてみたら、その主婦の組織が一番良かった。
ところが、いざ実際に主婦にやらせてみたら内容がひどくて話にならなかった。後日、コンペの際には男性の担当者が行ったということが発覚。アウトプットのレベルが低すぎて使い物にならず、結局そのプロジェクトは頓挫した。
なるほど、内職ワークにはそういうリスクもあるんだなあ、という、いい社会勉強をさせていただいた。
……やはり、自分で回らなければならないだろうか。
かくして、スーツにアタッシュケースといったいでたちで「ここならなんとかやってくれそうだ」という家を訪問してカメラを設置し、高速ムービーの拠点を作って回るのである。
……どこが写真家なのだろう(汗) おまけに、1週間のうちのほとんどは地方回りを行って、家にはいられないに違いない。
もっと、なんとかならないものだろうか。全自動パッケージみたいなもの(中にMacとCCDカメラが入っている)を設置して、一切手を触れさせないような仕組みになっているとよいのかもしれない。
今度は、全自動パッケージを手作業で組み立てて発送ということになる。
装備も方法論も、もう少し考え直す必要がある。また、始めてもいないうちから、なにを疲れているんだろう私は(汗)。