Tiger.の見どころ(私家版)

「Automator」……同じようなソフトをファイルメーカーProなどを使って試作していたので、ちょっとくやしい(思いついたらどこかにドキュメントとして書いておくべきか?)。このままだとオオカミ少年と呼ばれてしまう(汗) 正確にいえば、すでに少年ではないので「オオカミおっさん」というところか。

脱線したので話を元に戻す。AppleScript書きの視点から見たMac OS X 10.4 Tiger.の見どころレポートを書きなぐってみた。

ただ自動処理を行うのにわざわざエンドユーザーがAppleScriptを書く必要はないと思っていた。Mac OS X用人工知能インタフェース「Newt On」もそのようなところから出発したものだ。

AppleScriptがもたらすメリットはエンドユーザーが享受できることが望ましいが、当のエンドユーザーはスクリプティングを敬遠している。ならば、見た目を変えて誰でも直感的に使えるようなUIを与えてやればよいわけである。メニューから「どのアプリケーションに」「どのような処理を」「どんなふうに」行ってほしいか選択するだけで自動処理のワークフローを記述できるソフトを(Newt Onとは別のアプローチとして)考えていた。

WebViewでいろんなインタフェースを実現する実験を行っていたのも、こうしたアプリケーションを実現するためのステップだったのだが、本家が作ったのなら別に自分で作らなくてもいいような気もする。ただ、より先鋭化したツールの存在価値はありそうなので、継続して研究すべきだろうか。Tiger.の出荷よりも前に出してしまうという手もあるが、そういうアプローチは海外の連中の方がお得意なので、おそらく海外の連中に先を越されることだろう。

ここ半年から1年ぐらい、USのAppleScriptチームが「ほかに何か作ってるんじゃないか?」と思えるほど多忙をきわめていた。おそらくコレを作っていたのだろう(これで、HyperCardの後継環境の登場という目は消滅した)。ただ、Sal Soghoian(US AppleのAppleScript製品担当)は自分でAppleScriptの本を執筆していたので忙しかったんだろう、という見方もある。自宅で作業しているSal SoghoianをiChatで見つけて話しかけたのだが、返事が返ってきたことはなかった。彼も忙しかったのだ(さんざんバグレポートで文句を言っているので嫌われているという説もある)。

Automatorは自分で考えていたものよりも、スマートなUIになっているので、かなりいい感じだ。これを見るかぎりでは、iChatも自動処理の中に組み込めるようでもあるし、従来のようにいろいろ外部からコントロールしていると動作がおかしくなるようなことが(iChat)少なくなっていることが期待される。


「VoiceOver」……これまでSpoken Interfaceと呼ばれていたもの。目が見えないという人でも使えるように、現在のウィンドウの状態やアプリケーションの状況を声でレポートしたり、声で操作(順当なところで英語オンリー)するというものだろう。


「Spotlight」……メタデータの検索システム。やはり、検索用のフロントエンドを用意してきた(下記記事参照)。


ただ、既存のファイルシステムの概念を取り払うようなことはせずに、ファイル保存の処理に対してメタデータ作成プログラムをフックしている印象。現実的な解決策ではあるものの、何かが抜本的に変わったというわけではなさそう。個人的な興味は、このSpotlightがAppleScriptからコールできるかどうかという点に集中している。Newt Onのために使ってくれという機能にも見える。

ファイルシステムの仮想化という意味では、「仮想フォルダ」(条件に合うファイルが置かれているように見えるフォルダ)にその試験的な実装が見られる。Mac OS X 10.4のレベルでは、まだそれほど冒険ができなかったということだろう。

「Xcode 2.0」……Xcodeはいままで、あまり積極的にプログラム開発をアシストしてくれる存在でなかったように感じている。だが、紹介ページを見ただけで「わぁ、これは嬉しい!」と思えるようなインタフェースが採用されているではないか。

http://www.apple.com/macosx/tiger/xcode.html

ビジュアルモデリング&デザイニングというのだろうか、ビジュアルにプログラム間の関係性を表示してくれるのはうれしい。だが、これってObjective-CだけでなくAppleScriptでプログラムを記述した時にもちゃんと表示されるのか、コレ(汗)? だとしたら、これだけのために欲しいような気がするのだが……。

だが、そうした反面、自分の作ったコードを管理して再利用するための機構などは用意されていないようにも見える。情報の整理を行うための仕組みも必要だが、生産性を向上させる仕組みも同時に必要だと思うのだが、いかがなものだろうか?


「Dashboard」……Mac OS XのGUIをラッピングして、その上にあまりGUIらしくない世界を作ることに執念を抱いている自分にとって、このDashboardのUIは非常に近いものを感じる。

実装はまんまKonfabulatorに見える。KonfabulatorをAppleが買い取ったのかと思えるほどで、そのあたりの下世話な話も興味深い。ただ、Exposeと組み合わせるというアイデアは非常に秀逸で、有用性も高い。

こうしたこまごまとしたツールがデスクトップに置いてあっても、たいていデスクトップはウィンドウで埋まって見えない状態にあるので、それほど実用性があるわけでもなかった(すぐに使わなくなった)。それをワンアクションで呼び出せるというのだから、結構な話だ。

公開されているLonghornのスクリーンショットでは、デスクトップ(画面右サイド、まあ固定ではないだろう)にこうしたウィジェットが常駐してたが、それなりに広い画面が必要になってしまうので大変そうだとは思っていた。

Dashboardは、いにしえのMac OSのDA(デスクトップアクセサリ)の再来とも言える。ウィンドウの枚数が増えて、煩雑になりつつあったGUIを整理し、ツール的なものは別途呼び出せるようにしたという……温故知新的なアイデアだ。

「iChat AV」……最大4人(自分も入れて)と話せるという「多人数化」の流れは当然といったところか。現行のiChat AVでもResourceフォルダにも思わせぶりな未使用アイコンが転がっていたりで、「まっとうな進化」を遂げていることが感じられる。3Dでチャット内容を表示するというのは他のビデオチャットのソフトで採用されていたアイデアなので、まあ順当なところだろう。


総評……Sal Soghoianなにやってんの? 弾幕薄いぞ!!

まいどまいど、あいかわらず、いつもの通り、AppleScriptのマーケティング的なメッセージが伝わってこないところに不安を感じる(汗) まあ、AutomatorがAppleScriptベースで制御を行っているものと思っておこう。保存されるAutomatorのワークフロードキュメントはおそらくXMLベースの書類になっているはずだが、実行時にはビルトインのAppleScriptが動いているのだろう。

ちなみに、USのAppleScript Users MLでもこうした話が話題になっているものの、関係者からのコメントは出ていない。Mac OS Xの内部でAppleScript以外のテクノロジーを実装して連携させているのではないか、と見る向きもある。

だが実は、そうしたテクノロジーはすでにMac OS Xに実装されている。Speech Recognitionによってアプリケーションを動かしているのは、どうやらAppleScriptだけではなく、XMLベースのメッセージングシステム(ボタンやメニューのコントロール)が併用されているようなのだ。このあたりをVoiceOverの開発と関連して強化したと読むこともできる。

とりあえず、関係者のコメントが待たれるところだ。

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