いろいろ試していたら、デスクトップのウィンドウをAppleScriptで作れることがわかった。デスクトップピクチャを張り替える程度は1行で記述できて造作もないが……そういうものではなく、自分で新たな働きを持つ「デスクトップ」そのものを作れてしまうというものだ。
デスクトップというのは、本質的には「一番後ろに表示されるウィンドウ」であって、まだMac OS Xがいまほどには固まっていなかった頃、不意にマウスでデスクトップをドラッグできてしまった経験がある。動くはずのないものが動いて、たいへん驚いた。
デスクトップも結局はウィンドウに過ぎないので、その上にボタンやテキスト、グラフィックやムービーなどを配置しておくこともできる。ドラッグ&ドロップすらできる。デスクトップに自作のランチャーやゴミ箱を作って置いておくことだってできるわけだ。
さらに、「壁紙」としてFlashやQuickTimeのアニメーションを常時再生することも可能であるし、メニューを作り込んでおけば、ニュース(Webコンテンツ)のブラウズなどを簡単にできるようにもなるだろう。
さらに、デスクトップ上に幾つかの枠を作っておき、そこにファイルをアイコンの状態で仕分けることでそれらを一気に処理するといったことも可能になる。
なるほど、昔Windowsで盛り上がったActive Desktopというのはこの状態でデスクトップにWebブラウザを置いただけのものなのか、ということがよくわかった。Webブラウザをデスクトップに置くというのであれば、すでにマイクロソフトによる実績があることになる。
インターネットブームの前に登場した技術でもあり、ユーザーに向けて情報をPushするためのものとして登場してきた経緯もあり、まだ常時接続は高嶺の花で、「わざわざ電話代を払って、好きでもない情報が勝手に送りつけられて来る」と、ユーザーから敬遠されたように覚えている。
デスクトップをWebブラウザにする、というアイデアにはとくに斬新なものではないことが検証できた。では、なぜそれを思いついた開発者はWebブラウザ以外のものをデスクトップに配置しようとしなかったのだろうか。
Webブラウザ以外のものを持ってくるとユーザーが混乱するという配慮は、きっとあったことだろう。また、Webブラウザなればこそ、広告収入などのビジネスモデルを確立できるかもしれない、と(当時は)有望視されていたのだろう。あくまで「情報」をPushすることが目的であって、機能を提供することは真剣に検討されてこなかったのだろう。
フローティングウィンドウで最前面にフロートするソフトは「押しつけがましい」という気がするが、デスクトップに情報をどんどん集めて表示したり、機能を付け加えるというのであれば、控えめでよいかもしれない。
Mac OS X用のデスクトップマスコットである”Konfabulator”も、実はアクティブデスクトップに近いソフトだ。自分でマスコットのモジュールを作れるという点で人気を博した。モジュールをJavaScriptで記述する必要があるため、あまり感心を喚起されなかったのだが、KonfabulatorがデスクトップWebブラウザ(背景が透明)であるとするならば、この仕組みは合点が行く。
「Scriptデスクトップ」は、情報もさることながら「操作用のUIエレメント」をデスクトップに配置すること、AppleScriptやShellScript、Perlなどさまざまな言語で処理を記述できるようにすれば、かなり面白いものになるだろうか。
たとえば、サーバ監視用として、同時に複数のコンソールをデスクトップに出しておき、処理への対処もすべてデスクトップにボタン配置しておくことで、問題が起きたら音で知らせ、定型的な対処はデスクトップ上のボタンを押すだけで大丈夫、というように操作UIをまとめてしまうのだ。
iChatの複数のチャットルームのログをデスクトップに表示しておき、挨拶ぐらいならボタンやメニューから選んで対応、というのもできるかもしれない。
また、これらの機能別のScriptデスクトップを複数枚用意しておいて、それぞれを切り替えることで、用途別に手軽に切り替えられたりもするだろう。
思いつきはしたものの、実際に誰もが使って便利で分りやすいというレベルに持って行くためには、かなりの努力が必要になるだろう。こういうアイデアは、しばらく寝かせておくにかぎる。
とりあえず、おそろしくチープな手段で「壁紙ムービー」や「壁紙Flash」を実現できることが分った。壁紙Flashを実現するためには3万円ぐらいするソフトを購入しなければならなかったのだが、これも必要なくなるにちがいない。