「噂」という行為と「予想」という行為は大きく異なる。前者が、他人の言葉を無批判に受け入れるのに対し、後者は自ら考えて積極的に状況判断を行うということだ。さらに予想の確度を向上させることで「予測」にもなりえる。
予想の確度を上げるためには、予想を行う対象のモデリングの精度を上げ、さまざまな仮説と検証を行い……さらに可能な場合には関係者に自分の考えをぶつけてみることすらある。
そこで、さまざまな状況判断からMac OS X 10.4における「テーマ」を考え、そのうえで「何が必要か」なのかを明らかにしたい。
「テーマ」は、新しいマシンを買いたくなり、既存のユーザーもアップデートしたくなる、ということだ。これはまず、間違いない。その上で、何かを実現することになるだろう。より、未来を感じさせるような機能を提供することになる。ただ、一昔前のようなむき出しのハードな未来感ではなく、シンプルでソフトな未来感というのが、ここ数年のアップルの未来感、ビジョンであったりする。
Mac OS X 10.3までに出来上がった「状況」についても考慮する必要がある。従来型のMac OSの世界観をUNIXベースのMac OS Xの上に、ほぼ構築し終わったというのがMac OS X 10.3だと思っている。「かつてあったもの」を作り直したら、次に行うべきは「さらなる拡張」だ。
ここで行われる拡張は、攻守両面を指向するものとなる。Windowsの次バージョン「Longhorn」で予定されているような特徴は、先取りして実装されるかもしれない。ファイルをデータベースで管理するとか。ウィンドウシステムの「見せ方」でひとワザ見せてくるかもしれない。Linuxの持つ何らかの機能も乗せてくる可能性がある。このあたりは「守り」指向の機能だ。
問題となるのは「攻め」指向の機能だ。OS標準添付のiアプリをOSの一部として組み込むのではないかと言われているが(噂)、それを行って何かメリットがあるだろうか? 現在仕様が公開されている音声インタフェース「Spoken Interface」と組み合わせるとすれば、OSの一部として組み込む意義はあるだろう。だが、組み込まなくても制御は可能なので、この噂の確度には疑問が残る。
添付アプリの強化は当然行われるだろう。ビデオチャット用アプリケーションのiChat AVはその筆頭だ。多人数での同時会議ができる、ということにはなるだろう。セキュリティの強化が行われるかもしれない。iMovieの各種エフェクトがビデオ会議で利用できたりすると面白いとは思っている。
クラスタリング方面の機能でも、何か面白いものが見られるかもしれない。Final Cut Proと組み合わせて、クラスタ構成時に処理速度の向上が行えるような機構を載せてくる可能性はある。個人ユーザーでも、マシンの台数を揃えると日常的なアプリケーションの実行速度を向上させられたりすると魅力的だ。
アンチウィルスの機能もOSの一部として組み込まれ、ソフトウェアアップデートと同様、ウィルス定義ファイルが提供されるかもしれない。サードパーティのアプリケーションのアップデート機構も一元化されるかもしれないが、その必然性はあまり見えてこない。むしろ、シェアウェアの課金などをアップル側で一元化できると有用だろう。ぜひやってほしい(汗)
最大の目玉はPowerPC G5(と、あるいはG6)への最適化だと言われている。確かに、それは大きなアドバンテージだとは思うが、G5搭載マシンが増えないかぎり、ユーザーにはそれほどアピールしない。逆に見れば、Mac OS X 10.4が登場すると言われている2005年春には、主なマシンはG5への移行を済ませているということになる。少なくとも、プロ向けのマシンはG5ベースになっているだろう。ボリュームゾーン向けのマシンも一部は移行しているかもしれない。
G5への最適化によるパフォーマンスの向上、というだけではOSのアップデートの動機にはなりづらい。ローレベルのユーザーにも訴求するようなミーハーな機能(10.3でいうところのExposeやFaster User Switching)が何か欲しいところだ。ウィンドウの開閉アニメーションにKeynoteの場面切り替えのようなド派手なものを使えるようになるとか。
最近の動向からいえば、作業をシンプルに行えるような機能も提供するだろう。メジャーリリースのたびに総とりかえになっているFinderは、この「シンプル化」が適用されるかもしれない。
ただ、まだこれでは目玉機能が少ない。比較的簡単にできて波及効果が大きいのは、UPnP対応ぐらいだろうか。これはやりそうな気がする。
その他、直接アップルに対して要望を出している機能も幾つかあるが、それについてはここでは触れないことにしておく。個人的な楽しみもとっておきたいものだ。