自分の発想の根本にあるのは、ものごとの本質を考えるということだ。対象となるモノや概念が、どのような条件下で発生し、原点からどのような進化を遂げて目の前にあるのか、そういうことを考えるようにしている。
こうした「本質」について熱く語り合うことを、自分は「本質トーク」と呼んでいる。
本質トークについては、相棒(仲間内で「大王様」と呼ばれている)の方が一枚上手だ。自分の分析した「本質」に対し、相棒から「いや、それは違うな」とやり返されることもしばしば。非常に知性や感性を刺激されるひとときであり、得難い経験だ。
ただ、あまりにも痛い「本質」をぶつけ合うと険悪な雰囲気になり、電話で怒鳴り合いになることも一度や二度どころの騒ぎではない。が、かれこれ10年来の付き合いになる。
目の前にある事象を本質的に考える「本質トーク」を行える友人は貴重だ。逆に、そうした話ができる相手でないと友人関係が成立しづらいようにも思える。これは男女を問わず、である。
自分の相方も割と(そうは見えないが)鋭い人間なので、最近は彼女から見た「本質」でやりこめられることがたびたびある。そういう頭の良さに人間的な魅力を感じるものだ(たまにはほめておかないと)。
AppleScriptを覚えたてのころ、「1+1」が「2」になることの本質を知って驚いた。
そのまま文章にしてしまうと、何のことやらよく分からない。分かりやすく説明すると……
「足し算」というのは数字を足すだけのものではなく、文字も足せる。文字を足すことができれば、文字から構成されているものはなんでも足し算で作ることができる。
本質的には、HTMLだって、PerlのCGIだって、純粋に文字から構成されているものであれば、足し算だけで作れてしまうわけである。事実、そうしたソフトをAppleScriptで作って、巨大な成果を得た(お金ではなく、時間と労力の節約を指している、念のため)。
「これはドえらいことかもしれない……」
事実、この「1+1=2はすごいんだの法則」はこれだけでは終わらなかった。さまざまな高度なAppleScriptのプログラムは、既存のアプリケーションをいかに組み合わせるかによって発生することが理解できたのだ。
地図ソフトと住所録データベースソフトを組み合わせることで、住所から緯度経度を算出する「住所ジオコーダー」が作れたり……
チャットソフトと監視ソフトを組み合わせて「チャット経由で監視カメラの異常を検知できるシステム」を作れてしまったり……
日本語要素解析のソフトとDTPソフトとデータベースソフトを組み合わせることで、本文に対して自在にふりがなを送れるソフトを作れたり……
こうした驚きのAppleScriptソリューションも、みな「1+1=2」から発生したものだ。いや、実際の効果から考えれば「1+1≧2」になるのかもしれない。組み合わせの妙は、単体では考えられないほどのパワーを生むのであった。
だが、人間関係はこう単純には行かない。「×」の人もいれば「÷」の人も「−」の人もいる。だが、「÷」「÷」とか「−」「−」といった組み合わせでプラスのパワーを生むことさえあるのだろう。逆に「−」「×」でもんのすごい後ろ向きなベクトルを発生することもありえる。
「+」の人同士を組み合わせて「++」な結果を得るというのは、ごく当たり前のことかもしれない。「−」や「÷」の人を組織して巨大な力を生むことのできる人間には深い尊敬をおぼえる。そういう人物こそ、真の偉人(ぐれーとまん)なのだろう。
……何の話だったか(汗)