相方と電車に乗っていたら、中吊り広告に不思議な商品名を発見した。
「ピュレグミ?」
”Pure GUMMY”と書いてピュレグミと読むのだそうで、普通に英語読みすれば「ピュアグミ」となるところを「ピュレグミ」。
何か、不思議というか癪に触る商品名である。
英語をまともに読めない層をねらってわざと日本語読みの製品名を付けたのだろうか、なあ、どう思う? と、相方に聞いてみると実に味も素っ気もない返事である。個人差はあるのだろうが、どうも彼女はその種の想像力に乏しい上に興味もまったくないらしい。
もし、わざと英語を日本語読みで誤読した際の発音をねらって商品名にするのであれば「プレグミ」となるはずだ。
この商品の製品名を考えている会議の光景がどんなだったかを考えると、いろいろと想像力をかきたてられるものがある。
やっぱり、ありがちなところで女性社員とか若手の小規模なプロジェクトチームが決めたものなのだろうか。それとも、広告代理店に案を持って来させたらこういうことになったんだろうか。女子高生でも集めてヒアリングして決めたのだろうか。
まさか、社内に「お菓子のネーミングをさせたら右に出る者はいないというお菓子命名名人」というのがいて、「うむ、ピュレグミでどうじゃ?」と重々しく告げたのだろうか。いや、そんなことはないだろう。
いやいや、本当はプレグミで企画が走っていて、最後の土壇場で社長が「あー、なんかおいしそうじゃないな。ピュレグミにしろよ」と、販促グッズや広告などが全部出来上がっているタイミングでちゃぶ台返しをしたのだろうか。
そのために影で泣いている現場の苦労が……などと考え出すとひたすら妄想ワールドが広がりそうなのでこのあたりにしておくが、商品名については、ひたすら「語感」や「音感」で決めたのだろう。あまり意味を求めても仕方のないところだ。「おいしそうな名前」「記憶に残る名前」「子供でも発音できそうな名前」というのが命名の基準になるだろう。長過ぎてもいけないわけだ。
「ぷにパイン」「チーズビット」「フリスク」「ドンタコス」……
だいたい5文字が目安で、長くても8文字といったところだ。長くなるのは誰でも知っているキャラクター商品の名前を冠した場合だ。
「スヌーピーといっしょキャンディー」
「チョコスナックディズニープリンセス」
「なかよしキッズディズニーキャラクターライオンキング」
まあ、キャラクターの絵で判別する程度だろうか。
かくして、そのピュレグミとは何であるか。Googleで検索してみると、割と評判はよいらしい。そういう種類のお菓子が好きな人間でなければわざわざWeb上にそのような感想を掲載したりはしないので、あえて「まずい」と書いたものは見つからないが、どういう人間が「おいしい」と言っているかというのはひとつの目安になる。
当たり前のことだが、自分のようなおじさん向けではないことがよく分った。しかし、彼女は最近私の影響を受けてこの手のお菓子に目がなく、同い年の相棒は私よりも前にこの手の情報はキャッチして、すべての味を制覇して「いまごろ気づいたのか?」と喜んでいそうだ。実は、隠れたボリュームゾーンというのは、若年層ではなくもう少し上にあるのではないか、などと考えてみたりもする。
ピュレグミはカンロ株式会社の製品群の中にあって、既存ののどあめタイプの製品の伸び悩みを埋めるに十分な売上高を確保したようだ。その結果、前年同月比で5.3%の増収というのだから立派である。
とりあえず、実際に買ってその味を検討してみよう。