予期せぬ雪崩アクセス「さあ大変だ!」

相棒から電話だ。かなり機嫌の悪い声である。相棒の機嫌が悪い時には、声がうわずるのだ。

「動画系のさる有名なサイトに“高速富士山”が紹介された。ハンパじゃないほどのアクセスが来て、サーバーの処理能力が追いつかない。このまま行くと、サーバーがパンクしてしまう……」

高速富士山のムービー本体は、相棒が管理しているairmac.orgドメイン上ではなく、私個人のOCNのディスクスペース上に置いてある。負荷が増えることを嫌って、本サイト側には普通のページしか置いていなかったのだが、それでも処理が間に合わないというのはどういうことか。

「1時間でXXXXXぐらいのアクセスがある」

ドメイン全体の1日分のアクセスが1時間に集中したことになる。これはちょっとただごとではないな、と思いはじめた。しかもその勢いは依然として続いているのだ。

サーバーの物理的なロケーションについては相棒任せなので、どこにあるのかは知らなかった。聞けば、データセンター内のサーバ上にあるものの、間借り状態なので他のサービスに影響が出てはまずいのだという。負荷についてシビアにならざるを得ない理由はよく分った。

後から整理して書いているので、理路整然と話が流れているように見えるが、その時点で相棒はパニック状態で「ぐわあああ、サーバーがパンクするぅぅぅ!」と絶叫しているし、こちらはいたって呑気に「あ、こんなにアクセスがあるんだ。あはははー。あ、いろいろ感想が上がってるんだねぇ」ぐらいの反応。相棒は余計に苛立った。

なぜか一方的になじられるという不毛な状態に陥ったので、仕方なく状況を整理して解決策を提案した。

「ページそのものを外部に移して処理の分散を行うしかないだろう。特定のページリクエストを外部に転送するよう設定してくれ。こっちはファイルを書き換えてOCNに移す」

きわめて現実的な提案を行ったのだが、相棒は「書き換えなんていいから、すぐに移せ!」という剣幕である。不機嫌さがこちらに伝染した。

よそから別件で電話があったが、この作業をしながらだったので不機嫌なまま適当に話をしてすぐに切った。相手がおびえていた。


OCNの個人向けホームページサービスでは、HTMLファイルに対する外部ファイルのインクルード(サーバーサイドインクルード)などの気の利いた処理は行えない。通常、複数ファイルで構成しているページを、1つのファイルにまとめなければならなかった。リンクも書き換えて、メニューは正常に動くようにした。

かくして、相棒の方の設定も終了し、「サーバー負荷が1桁減った。これなら安心して寝られる」ということに。

後になって、さすがに相棒もバツが悪かったのか、別件で電話をしてきた。彼も彼で、私が不機嫌であったことを電話から察したに違いない。きわめてなごやかに雑談をして、電話を終えた。

まだ私にはやることがあった。

動画サイトの更新状況から、24時間程度経過すればアクセスの波が落ち着くことを予測。高速富士山側の更新用プログラムは、午後7:35頃に更新を行うため、動画サイトの更新よりも前になる。高速富士山のムービーファイルは毎回乱数でファイル名を決定しており、サーバーサイドインクルードが利用できないOCN上のページは、自動更新されたとたんにムービーファイルへのリンクを失うのだ。

仕方がないので、高速富士山の更新用AppleScriptに手を加えて、乱数でファイル名を決定している部分をコメントアウトして決め打ちにした。これで、アクセスの波が引くまで数日間は耐えられるだろう。

今回はたまたま相棒も私もすぐに対応できたからよいが、突発的な雪崩アクセスがあるとサーバー管理側は本当に困る。最近はブロードバンドの利用者増により、クライアント側のほうが回線資源が潤沢である。データセンター側の回線がアクセスで埋まってしまうなど、不均衡がただされないままだ。困ったものである。

そんな大変な思いをしても、高速富士山のシステム運用はやめられない。理由は単純、「そこに山があるからだ」

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