「Mac People」を書店で購入して読んだ。文字ばかりで読んでいて疲れる本になってしまった。特集記事がMac OS Xのディレクトリの徹底解説というのでは、一般ユーザーにとっては読んでいて辛い(楽しめない)ものではないだろうか。
ディレクトリ名が変にデザインされた(崩された)文字で表記してあり、これがきわめて読みづらかった。あのデザインは最悪だ。
リニューアルのために余裕がなくなってしまったのだろうか。従来よりも「読みたくない」本になってしまった。前号からその傾向が強まったように感じる。
これ以外で、Mac Fanぐらいしか読むに値する雑誌は(Mac系で)なくなってしまった。ニュースはWeb、詳しい話は書籍かWeb……。雑誌も、広告収入がなかなか見込めないとなると、紙売りで頑張るしかない。そこで、値段を上げてなんとか採算を取ろうという話になるが、上げたら上げたで購入されない。
198ページ程度の雑誌とか、初心者からパワーユーザーまでまんべんなくカバーする全方位雑誌というコンセプトに無理が生じているのではないだろうか。紙媒体の雑誌が「終わった」とは思いたくはないが、月刊とかすべての読者層をねらうという方法論は、かなり辛くなってきているのではないか。
もっとターゲットをしぼった、小振りな媒体を幾つか用意したほうがよいのではないか。また、それを行うには紙媒体では辛いのではないか……そんなことを最近とみに考えるようになった。ただ、何を行うにも広告収入や売り上げのメドがたっていなければ無理な話で、形のないもの(WebとかCDにおさめた電子マガジン)に広告主がお金を出すかといえば、それはかなりつらいだろう。読者もまたしかりだ。
昔、自分が雑誌の単なる読者だったころ、雑誌の何に対して対価を払っていただろうか?
ソフトの使い方が分らないといってはソフトの解説記事を読み、新製品が出たといっては紹介記事を読み、業界動向を知りたいといってはインタビュー記事を読んでいた。「知らないけれど興味のあること」を求めて、立ち読みしたり買って読んだりしていたものだった。
昨今では、コンピュータのユーザー層が広がって、読者の求めるものが変わって来たという。即物的に、すぐに役立つ記事や、欲求をストレートに満たしてくれる記事を求めるようになってきたのだという。かくして、CDやDVDのコピー記事が掲載される雑誌が、恥ずかしげもなく書店に平積みされるに至るわけだ。
自分が読んでいて一番面白かったのは、10年以上前にあった「ザ・コンピュータ」という雑誌だ。業界の分析やインタビュー記事が多く、ソフトの評価などは少なめという味付け。あれをいまやって売れるのか、という話には否定的だが、ああいうテイストは欲しいな、という気はする。ザ・コンピュータに「Keyman In USA」というインタビュー記事を書いていたライター(編集スタッフだったか)に後日会う機会があって、「学生の頃、あなたのインタビュー記事を毎月読んでいた」とお礼を言う機会があった。どうしても言いたかったのだ。
DVDコピー記事を書いたライターを、10年たって覚えているだろうか? たぶん、それはないんじゃないだろうか。
メーカーが何を考えているのか、開発側が何を考えているのか、販売店は、流通は? 仕事に携わる人たちが何を考えているかを知りたいというのは、かなり普遍的な欲求だと思うのだが。
読んだら、来月号が待ち遠しくわくわくする雑誌というのを読んでみたい。友人に相談したら、「もう、求めるものが一般ユーザーからはかけ離れてるんだから、無理だろう」となだめられた。しかし、どうしてもそうした雑誌を読んでみたい。もう、発売日にはいてもたってもたまらなくなって、仕事をサボってでも書店に走りたくなるような雑誌が。
いま、雑誌の編集に携わっている人間は、コンピュータの未来に夢や希望を持っているだろうか? たぶん、持っていないと思うのである。そして、雑誌のあちらこちらから、それはそこはかとなく読者に伝わってしまうものなのである。
少なくとも、そういう匂いを漂わせないで欲しいと願ってやまない。