IBMを呼びたい

Apple Users Group Meetingの企画で、一般性があって誰でも来たくなるようなものがないだろうかと、AUGM終了後にフラフラの状態で相談していたところ、

「前から思っていたんだけど、IBMを呼んでCPUの話を聞いてみたいよねー」

これが予想外にメンバーの同意を得た。しかし、同時にこれが口に出して言うほどには簡単ではないということも、うすうす分っていた。

IBMにとってMacユーザーは「直接の顧客」ではない。

Macユーザーの集まりに出席したところで、CPUメーカーとしてのIBMは別にメリットも何もないのだ。彼らにとっての顧客は米国のApple Computerであって、エンドユーザーではない。

現場のバリバリの技術者が外部に対して顔と名前を出すことはないだろう。引き抜きのターゲットになってしまうからだ。となると、管理職クラスが出てくることになるだろうか。

また、CPUの話といっても設計の話や製造プロセス、使用する素材の話まで多岐に渡っており、技術系の人が1人で説明できるようなレベルを超えてしまっているようにも見受けられる。

さらに、日本にはPowerPCの設計や製造にかかわる部署が存在しないことも予想される。PowerPCに関する話を技術者から聞きたいのであれば、本社から担当者が日本に出張して来ているタイミングで、、、という雲をつかむような話になってしまう。さすがに能天気なわれわれでも、それがどんなに難しいことかは想像がつく。

技術系の人に説明をお願いすると大変そうであるし、かえってSales系の人の方が向いているという社内的な判断がなされる可能性は高い。事実、雑誌などで取材を行う場合に対応するのはSales系の人が多いとのこと。ただ、PowerPCのSalesというのは組み込み系が多いはずで、デスクトップやサーバー用のPowerPC 970/970FX/975といったCPUについてSalesがどの程度の情報を持っているかは期待できない。

ここまで事前のシミュレーションを行ってみて、IBMを呼べるのか、という問いには「90%以上の確率で無理」という答えが出てくることになる。こういうオペレーションを行う場合には、広報経由で話をすることになるが、IBMの広報は割と固いのだ。

以前にJRAに導入されているRS/6000(IBMのWS)のシステムを取材したときに、日本IBMの広報とは割とすったもんだしたことを覚えている。

ちょうど映画「クリフハンガー」(スタローン主演)の映像処理にIBMのRS/6000を使ったという話を聞いていたので、コラム中にその旨書いておいたら……IBMの広報に見せた段階で「これはちょっと……」と物言いがついた。結局、他の用途にも使われている旨補足を行ったのだが、「ほんっとに固いねぇ」というところであった(いや、むしろそれは当然の反応である)。

パソコン系のメーカーの広報はソフトな印象が強いが、IBMの広報はまるで大メーカーの広報そのものである。まあ、事実IBMは大メーカーそのものなのだが、、、。

日本のアップルなどは中小企業そのものであって、製品担当者とは顔見知りという状態であるが、IBMの製品担当者で名前の売れている人というのはあまり聞かない。ポータブル系でいろいろ作っている担当者やDOS/Vの親となった担当者がその筋で有名なぐらいだろうか。

ちょっとここで話を整理してみよう。

実は、われわれが聞きたいのはCPUの話なのであって、IBMから話を聞けたら最高ではあるが、IBMから話を聞くことが絶対条件ではないはずだ。われわれは、サイコーにCPUに詳しい人から話を聞きたいのであって、IBMというブランドから話を聞きたいわけではない。

そう考えると、選択肢がいくらか広がる。

たとえば、CPUアクセラレータのメーカーの技術者は、サイコーにCPUに詳しい人種のはずである。こうしたメーカーはPC系のカルチャーであるため、割とフランクに話が通ったりする。

ただ、アクセラレータは割とAppleにとってグレーなマーケットであるため、Appleがイヤな顔をするかもしれない。

ほかにもまだある。目下、「現代版Pippin」を作っているあのメーカーだ。

Pippinを知らない人のために書いておくと、昔にAppleがバンダイにMacのライセンスを供与して作られたゲーム専用機だ。インターネット端末的な性格も持っており、世に登場するのが早すぎた機械といえるかもしれない。PowerPC 603/60MHz程度だったので、スピードは推して測るべしといったレベルだ。ちなみに、売れずに残っていたPippinがプリクラ用マシンに転用されたことは業界内では割と有名な事実である。

そして、ゲームソフト開発者向けキットにPowerMac G5そのもの(+ちょっとした修正)を用いて、次世代のゲーム機をすすめているメーカーこそ、マイクロソフトなのだった。マイクロソフトであれば、IBMよりは話が通りやすい。

しかし、やはり競争の激しい分野であり、具体的な情報が聞ける可能性は低そうだ。そんな話をしてもライバルメーカーに話が漏れたりするだけで、自社にはメリットがないだろう。

USのAppleのハードウェア担当者から話を聞けたら、それもよいのだが……そういう人材は社内でも限られており、日本くんだりまでノコノコ出掛けてくることはないだろう。

はたして、8月末にどこかを呼べるのだろうか? すでにプロジェクトXと言っていいほどの難易度なので、大変である。とりあえず、ダメ元でIBMの広報に企画書を投げてみるといったところだろうか。

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