HyperCardの末裔たち(2)

HyperCardの血統を受け継ぐ者……という話の前に、果たしてそれは優れていたのか? という話がなされるべきだ。仮に優れているとするなら、それは何か?

使い勝手のよいオーサリング用のソフトウェアが、OSに標準添付されていた、という配布形態そのものが評価されている、ということはいえるだろう。内容もさることながら、標準添付されていたという事実自体が評価されていたのだ。

次に、内容そのものが画期的だったといえるわけだが、数年もすれば模倣者も出現してくるわけで、現在目にするHyperCard「っぽい」ソフトというのは、この「模倣者」に区分することができるだろう。血はつながっていなくても、姿形はそっくりというところだ。

真っ先にあげられるのは、Directorだろう。内蔵のスクリプト言語「Lingo」はあまりに有名だが、その文法体系はHyperTalkやAppleScriptにそっくりである(当初は、オブジェクトの指定も「of」でつなぐ構文を採用していたが、最近は「.」でつなぐ構文を採用している)。

オーサリング系のソフトウェアということで、非常にHyperCardを参考にして作られている印象を受ける。ただし、コンテンツの大量生産や複数ユーザの共同作業などの機能が弱く、HyperCardの欠点もそのまま受け継いでしまったように見受けられる。

次は、ファイルメーカーPro。さりげなく強力な機能が提供されており、また、Paint機能や画面作成機能に重点が置かれている。HyperCardが作り出したカード型データベースの世界観を継承し、拡張しているように見える。

かなり異論もあるかもしれないが、Visual BASICにもその香りが感じられる。その時代のソフトに多かれ少なかれ、影響を与えた存在がHyperCardであったように思う。

「HyperCard互換」をうたうソフトも登場してきている。SuperCardやMeta Cardなど、一定のファンを獲得しているが、大々的に流行っているというわけではない。やはり、OSに標準添付されることが重要なのだろう。ソフトがHyperCardに比べて複雑化しすぎている、という指摘もある。

では、いまHyperCardと同様にMac OS標準添付のオーサリングソフトウェアが登場するとしたら、どのようなものになるか? 今日的な環境下では、幾つか前提条件が出てくることだろう。

・Webブラウザ上でプラグインなしで再生できること
・もちろん、カラー対応
・作成したモノは単体でも利用できるほか、何かの「一部」としても再利用可能なこと

……こう考えると、JavaかFlashを書き出すものになる可能性が高い。再生プラットフォームを選ばない、という意味ではFlashが最も有力といったところか。

「次」あたりでやりそうな気がするのだが……果たして?

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