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AppleがIntelチップを採用したらどうなる?

AppleScriptが動いてGUIアプリケーションのコントロールといったハイレベルプログラミングがMac OS Xの上でできれば、CPUが変わろうが社名が変わろうが文句はないので、自分としてはプロセッサが変わっても影響はない。


とはいえ、CPUの切り替えは大変だ。


68kプロセッサからPowerPCへの移行はコンピュータ史上まれに見るほどうまく行ったが、当初はネイティブのソフトがなかなか出てこなくて、新しいCPUのパフォーマンスを活かし切ることができなかった。


技術的に見れば、エミュレーションであれだけのパフォーマンスを発揮してしまったというのは賞賛に値するとは思うのだが、ユーザーが新プロセッサの恩恵にあずかれるようになったのは、どう考えてもPowerPC 604以降、正直にいえばPower PC G3以降だ。


この2回目のCPU切り替えによって、ふたたびエミュレーションという言葉が脚光を浴びるようになるだろう。


Intelプロセッサ上でのPowerPCエミュレーションをどのように行うのか、もしくはPowerPCのマイクロコードのレベルでIntelプロセッサ上でエミュレーションを行う技術を確立したのか……


現在、PowerPC G4を使用しているプロダクトラインは先にIntelチップに切り替えられるかもしれない。Mac miniはその筆頭だ。eMac、PowerBook、iBook……このあたりはIntelプロセッサに一足先に切り替えるとして、ハイエンドのPower Mac G5とXserveをどうするのか?


Xserveは真っ先に切り替えても大丈夫かもしれないが、PowerPC G5のパフォーマンスが評価されて大量導入しているデータセンターなどはG5サーバーをやめられては困るだろう。G5 XserveとIntel Xserveの両方を出すのか? Appleとしては、ここでうまくつかんだ顧客を離したくはないだろう。


今回のWWDCでは、おそらくIntelマシン上で稼働するMac OS X 10.4 for Intel Processorが披露され、開発者にはIntelバージョンのMac OS X 10.4が配布されるかもしれない。開発用の実機に何を使用すべきか、など……詳細なコンフィグレーションが発表される。ビデオカードやストレージ、メモリなど条件がかなり厳しくなりそうだ。


たいへん大事なことを忘れていた。このCPU切り替えによって、ついにMac OS X上でMach-oのFat Binaryフォーマットが日の目を見る。NeXTstepが採用した、68k、Intel、SPARCなど複数CPU向けバイナリを1つのパッケージに内包できる仕組みだ。超懐かしい系の技術だ。このあたりの機能を(若干、ほとんど手直しの必要はない)強化したXcode 2.1もWWDCで登場するに違いない。


十年以上昔に登場した技術が、いまふたたび「最新技術」として日の目を見るのだ。NeXT時代を知る開発者はWWDCのキーノートスピーチで笑いが止まらず窒息しそうになることだろう。講演者(おJobs様だ)と話題(FAT Binary)が同じなのに、社名と時代だけが違うのだ。下手をすると、説明のためにNeXTの黒ボックスまでキーノートスピーチに登場するかもしれない。


慌ててCarbonベースからCocoaベースに書き換えるソフトメーカーが多数出現。Carbonベースというと語弊がある。たしか、CarbonアプリでもMach-Oバイナリさえ採用していればFAT Binaryには対応できたはずだ。正確にいえば、Code WorriorからXcodeへの乗り換えか。


Intelチップへの移行が実現したら、


・Mac OS X上でのWindowsエミュレーションが爆速に(CPUエミュレーション不要)

・モデルチェンジが頻繁になる(季節ごとに変わる)

・Mac miniの価格が戦略的に下げられる

・マシンのデザインに釣られて、「Windowsを動かすために」AppleのIntelマシンを購入するユーザーが出てくる

・中古Macの価格が暴落(G4搭載機)

・中古でも、一部モデル(PowerPC G5搭載機)は人気が出て高値安定。ビデオ編集など一部分野では強味を発揮する

・ノート製品の小型軽量化

・PC/ATメーカーの一部(HPとか)がMac OS X Readyなマシンを出荷

・Appleから「Mac OS X Enabler」PCカードが発売され、これをスロットに刺すことで無印のPC/ATでもMac OS Xが動くようになる。PowerPCエミュレーション高速化のために、カード上にはPowerPCチップ(ただしG4)が入る

・ノートの熱問題がたびたび問題になる

・ウィルス問題に対して今よりもユーザー側のケアが必要になる

・Appleからアンチウイルス・ソフトが発売される

・秋葉原にApple Storeができる

・Mac専門誌がMac OS X専門誌に衣替えする

・Apple Storeに「OS Switcher」のための相談コーナーができる

・PowerMacとかiBookといったネーミングは適切なのか? だいたい、G5といった明確な切り分けはなさそう。PowerMac 2006とかPowerBook 2007/4.2Gといったネーミングか?


……「ビジネス市場攻略のための新たな動き」が今回のWWDCの目玉だと思っていたが、それがインテルプロセッサへの移行だったのか。


 「いまお持ちのPC/AT上でMac OS Xが動きます」


実現したら、たしかにすごいことだ。


さらに、Switcher向けに「お試し版」のMac OS Xを「戦略的価格」で用意するかもしれない。Windows上やLinux上で、OSエミュレーションにより動作するタイプのMac OS X(with Emulator)だ。最初からインテルチップ向けにコンパイルされているので、CPUエミュレーションが必要ない。ネイティブブートするMac OS Xは別途購入してください、という寸法だ。


Appleには、よりトンがったデザインの未来的なマシンを設計してもらえるとありがたい。iMacの前モデルを除くと、最近は無難なおとなしいデザインの製品ばかりだ。

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